ひまわりが咲く頃 -YS- 編集終了

story 33 ページ35

“コンコン”

｢はい｣

入って来たのは
さっきの女性で
オーナーの奥さんだった。




｢坂下といいます。
少しお話しませんか？｣

｢あ、はい。｣




坂｢Aちゃん、数週間前に来ました。
雨が降っていて、ずぶ濡れで。
私の顔を見るなり、泣いて
大変でした。

愛してはいけない人だったと
泣きながら言ってました｣

｢愛してはいけない人？｣

坂｢あなたの事ですよね？

うちの娘があなたを見て
“ジョンウン”と言ったのは
Aちゃんが携帯に入ってる写真を
いつも見てて、
それがあなただったからなのよ｣

｢俺の写真？｣

坂｢そう。あなたの笑顔の写真｣




坂下さんはそれからの数週間の
ヌナの様子を話してくれた。




坂｢Aちゃん、
ご飯もあまり食べなくて
思い出したように急に泣き出して
フラッと出掛けたかと思ったら
2、3日帰って来なくて
みんなで心配したり、
本を読んでるのかと思ったら
同じページを何時間も開いてたり
何を聞いても、何も言わなくて･･･｣




俺はヌナに傷を負わせた。
深くて痛みを伴う大きな傷。




無理矢理にでも
連れ帰りたい。




でも、できない。
その傷をえぐるようなことは
･･･できない。




坂｢何があったのかは知りませんが
あなたなら救えると思いました。

送らない手紙を毎日書いてて
ゴミ箱に捨ててあるから。｣

｢捨ててある？｣

坂｢あなたに送られた手紙
私が送りました。
どこに送ればいいかわからなくて
事務所に送ったんです。｣

｢え？｣

坂｢何度も言うけど
あなたなら救えると思ったから。｣

｢でも俺がここで
強引なことしたら
ヌナが壊れそうで怖いです｣

坂｢さっき部屋から出てきて
リビングにいます。
私が少し話してみますので
傍に居てください。｣





坂下さんと一緒に
リビングへ向かう
俺の知らないヌナの本音。




聞きたくない気がする。
もし、俺の望まないものだったら･･･
そう思うと怖くて震えた。



でもあんなヌナ見たくない。
俺から愛される事で
ヌナが壊れてしまうのは嫌だ。
ヌナが嫌だと言うなら
1人で帰ろう。



1人で･･･。

story 34→←story 32

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す