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「口を慎め、T-02-33-W。今後お前の全ては我々によって監視され管理される」
飼い主に向けられた敵意を敏感に感じ取ったのか、チワワが私に向かって唸り始める。
この騒がしいチワワをここで撃っても何の解決にもならないし、もっとおぞましい事態を引き起こしかねない。
「……そっか、そうだよなぁ」
叱られた子犬のように眉尻を下げた元職員コネシマが立ち上がる。
私の静止もどこ吹く風で彼はこちらに歩み寄ってきた。
チワワのリードは彼の手から離れている。
「止まれ!」
「嫌やわ」
収容室に大した広さはない。
ましてこのアブノーマリティはチワワ1匹であるために収容室の中でも小さなものが割り当てられていた。
私の静止を聞かない元職員コネシマによってあっという間に壁際に追い詰められる。
あっ死んだなこれ。
「A」
ひたりと壁に彼の左手が置かれた。
さり気なく扉の方向を塞いでいるつもりだろうが、そんなものあろうとなかろうとすぐさま開けられる扉ではない。
緩やかな拘束から逃れられないまま、壁に押し付けられる形で密着する。
ここまで接近されてはピストルを撃つことは出来ない。
人ではないとはいえ、彼は元職員コネシマの姿である。
つまり人の形をして、男性で、世間一般からすれば整った顔立ちをした姿。
外郭で化け物とともに長期間過ごした私にはいわゆるそっち方面の耐性が全く無い。
「……〜ッ!!」
がぶり。
そんな効果音が聞こえてしまいそうなほど思い切り左耳に噛み付かれる。
痛いか痛くないかの境を絶妙に分かっているのか、募るのは羞恥心と不快感ばかりだ。
子犬が甘噛みするように何度も何度も食まれ、挙句耳朶を執拗になめられる。
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志摩(プロフ) - H2Oさん» H2Oさん、閲覧ありがとうございます。アブノーマリティの設定はめちゃくちゃ悩んだので褒めて頂けて嬉しいです。更新頑張ります。 (2019年7月16日 8時) (レス) id: 4b0ab5b92a (このIDを非表示/違反報告)
H2O(プロフ) - コメント失礼します。このパロディとても好きです。待っていました。各アブノーマリティの設定も凝っていて、読んでいて世界観に飲み込まれました。これからの更新楽しみにしております。 (2019年7月16日 7時) (レス) id: e433076a9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:志摩 | 作成日時:2019年7月11日 0時