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「Aは何でここに来たん?」
「……おい」
「ええやん、答えてや。……それとも、恥ずかしいんか?」


先ほどと一字一句変わらない質問。
それから名前に相応しい余計な一言が付け足された。
会話の内容だけを見るなら頗る楽しそうな笑顔を浮かべているだろう場面。
声色も心做しか愉快そうではあるものの、彼の表情だけが仮面のように動いていないのが不気味で仕方がない。


「ここが、翼が安定する、から」
「ほんまに?」
「……何なんだ一体」


緩やかに彼の口角が上がっていく。
表情筋が久しく使われていないのか、それはかなりぎこちなくて不格好な笑顔になった。


「お前は___________________?」
「……?すまない、聞き取れなかった」


彼の声で話していたはずの言葉が急に遠くなり、まるで異国の言葉を話されたかのように理解できなくなった。
認知フィルタやアブノーマリティの魅了等の能力を受けづらい私にとって、この現象は初めて体験するものだった。


「……いや、やっぱええわ」


ぐしゃぐしゃと頭を撫でられ、髪は無残にもバサバサになってしまった。
手ぐしでサッと整えると目の前の彼は何がおかしいのか腹を抱えて笑っている。
本当に、何がおかしいのか。
こんなの、あの頃はいつものことだったじゃないか。


「……どないしたん?作業、終わらんでいいの」


ハッとする。
腕時計を確認すれば確かに相応の時間が経っていて、禄に清掃作業も終わっていないことに気がついた。
とはいえ職員以外ではシャベル1本しかない空間にゴミが出るわけもない。
1度くらい清掃作業をサボったところで分からないだろう。
いや、それより何か大事なことを忘れているような。


「A、"コネシマ"によろしくな」
「……残念だが職員コネシマは退社済だ」
「は?」


持ち込んだ荷物を片付けて扉に手を掛ければ、これまでにないほど慌てたシャオロンに腕を掴まれて引き留められた。
未知のものとはいえTETHクラスを持つアブノーマリティに触れられて平然としていられる職員は数少ないだろう。


「待て、お前何で」
「作業は終わりだ」


彼の手を振り払って収容室から出る。
閉じた収容室の扉を叩くような音がしていたが、アブノーマリティの要求に応えてやる必要などない。
そこかしこに惨劇の爪痕が残る廊下を歩けば、雪の女王が職員を氷漬けにしたらしく決闘への出動要請が入った。

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志摩(プロフ) - H2Oさん» H2Oさん、閲覧ありがとうございます。アブノーマリティの設定はめちゃくちゃ悩んだので褒めて頂けて嬉しいです。更新頑張ります。 (2019年7月16日 8時) (レス) id: 4b0ab5b92a (このIDを非表示/違反報告)
H2O(プロフ) - コメント失礼します。このパロディとても好きです。待っていました。各アブノーマリティの設定も凝っていて、読んでいて世界観に飲み込まれました。これからの更新楽しみにしております。 (2019年7月16日 7時) (レス) id: e433076a9e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:志摩 | 作成日時:2019年7月11日 0時

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