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冷めかかった紅茶に口を付ける。
彼の声が聞き取れなかった時、私もようやく月並みの人間と同じようにアブノーマリティによって害される存在なのだと思えた。
だが暴いてみればどうだ、私は彼らの真実を表す名を認識した途端にその認知阻害を崩してしまった。
(職員A、作業を終了してT-03-32-Zの観測を行ってください)
「管理人、観測を始める前に少し時間を頂けますか」
(許可しますが、迅速に行ってください)
オスマンに喋らないよう目配せしつつ伺う。
オスマンは管理人に邪魔されたことが気に食わない様子だが、私がオスマンを蔑ろにしている訳では無いことが分かると再び笑顔を浮かべた。
まるで子どものような無邪気さを持ち、恐ろしいほどの気分屋である。
「オスマン、すぐに戻るから」
「どこ行くん?」
「秘密よ。でも悪いところじゃない」
「……じゃあ、待ってるめう」
口を尖らせて膨れてみせるオスマン。
不思議な語尾も相まって少し可愛らしく思えてきた。
引き留めるように重ねられた手を解いて扉を開ける。
いつもの手順で扉の施錠を済ませると、運良く目的の人物が歩いているのを見つけた。
「ケセド、アブノーマリティへの対処に際し譲って頂きたいものがあります」
「君は……確か、職員Aだね。何だい」
「茶器を1セット……カップとソーサーはいくつか頂けますか」
「……良いだろう。福祉部門のセフィラルームの権限を一時譲渡するから好きなものを好きなだけ持っていくといい」
福祉部門のセフィラであるケセドはコーヒーを片時も手放さない男……もといロボットである。
どうやら収容違反を起こしていた「何も無い」は鎮圧されたようだ。
恐らくアンジェラに事の顛末の報告をするために出歩いていたのだろう。
「では後ほど伺います。……失礼」
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志摩(プロフ) - H2Oさん» H2Oさん、閲覧ありがとうございます。アブノーマリティの設定はめちゃくちゃ悩んだので褒めて頂けて嬉しいです。更新頑張ります。 (2019年7月16日 8時) (レス) id: 4b0ab5b92a (このIDを非表示/違反報告)
H2O(プロフ) - コメント失礼します。このパロディとても好きです。待っていました。各アブノーマリティの設定も凝っていて、読んでいて世界観に飲み込まれました。これからの更新楽しみにしております。 (2019年7月16日 7時) (レス) id: e433076a9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:志摩 | 作成日時:2019年7月11日 0時