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F-04-39-Z ページ3

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(職員A、今日は新しく入ったアブノーマリティに清掃作業に行っていただきます)

高圧的な声がインカム越しに届き、緩やかにまぶたを持ち上げる。
今日は珍しく大した収容違反も無く平和だったが、数日ぶりに新顔が入ったらしい。
メインルームに設置された端末に送られてきた資料では危険度はZAYINと最低レベルだが、うっかり地雷を踏めば重篤な事態になりうる。


『F-04-39-Zは本棚の姿をしたアブノーマリティである』


本来であればランクの低い新人職員が経験を積むために世話をするようなアブノーマリティだが、ファーストコンタクトないし管理方法が確立されるまでは私のようなベテランが投入されることもある。
全てのアブノーマリティがそうだと言う訳では無いが。


『彼の本棚には蔵書が1つもない』


メインルームの本棚から1冊拝借する。
これをこの本棚に戻す日は来ないだろうが、もとより誰も気にもとめないようなインテリアとしての本棚だ。
もしこの予想が正しければ正式な手続きを踏んで本を搬入するべきだろう。


『保護当時、最下段に小動物の血液が付着していた。搬入時人員への被害は無し』


収容室はメインルームからかなり遠くに配置されたようだ。
まあ本棚なら収容違反を起こすこともそうそう無いだろうし、緊急対応が必要になることが多いアブノーマリティがメインルーム近くにいてくれた方が何かと便利だ。
……例外が多数存在することは言わずもがな。


『下から2段目にあるシミはコーヒーを零した跡だと判明している』


そういえばこの職に着いてから紅茶を飲みながらゆっくり読書するような時間が取れたことは1度もない。
お気楽な事務職として平凡に人生を終えるような将来設計を立てていたのだが、気がつけば人外のお世話と称して文字通り血反吐を撒き散らしながら走り回る毎日だ。
血の染みた長い長い廊下のそこかしこから不気味な音が響く。
また「歌う機械」の電源が入っているのだろう。
何度電源を落としても朝には電源がついているのだから困ったものだ。


「職員A、アブノーマリティF-04-39-Zの清掃作業を開始」


厳重に閉じられた扉を開き、収容室に足を踏み入れた。

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志摩(プロフ) - H2Oさん» H2Oさん、閲覧ありがとうございます。アブノーマリティの設定はめちゃくちゃ悩んだので褒めて頂けて嬉しいです。更新頑張ります。 (2019年7月16日 8時) (レス) id: 4b0ab5b92a (このIDを非表示/違反報告)
H2O(プロフ) - コメント失礼します。このパロディとても好きです。待っていました。各アブノーマリティの設定も凝っていて、読んでいて世界観に飲み込まれました。これからの更新楽しみにしております。 (2019年7月16日 7時) (レス) id: e433076a9e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:志摩 | 作成日時:2019年7月11日 0時

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