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「嗅覚?」
「Aが近いと分かる」
それは要検証案件では……?
毎日風呂に入っているはずだが、一応腕に鼻を押し当ててみる。
自分ではよく分からないものだ。
まして柔軟剤の匂いで機嫌を損ねられても困るから社内では無臭洗剤の使用が義務付けられているはずで、匂いが発生する要素に心当たりが無い。
「部屋を出てからの時間から推測するに、多分メインルームくらいまで効いとるな」
「そりゃ凄い、参考までにどんな匂いか聞かせてもらっても?」
「何か、ええ匂いがする。甘くて美味しそうな……でも俺甘いもん好きちゃうし、何て言うんやろうな。とにかくええ匂いや」
そう言って太ももに顔を埋めようとするコネシマの頭をひっぱたけば、何故か彼は嬉しそうに笑う。
人ではない彼の方が、人であるはずの私より余程人間めいた笑顔を浮かべるのだ。
彼とこの収容室で過ごす時間は悪いものではないものの、どこか奇妙で居心地の悪い感覚がずっと付きまとう。
そういう意味ではまだマゾ豚(粛清を待つ獣)といた方が心安らかにいられる気がする。
「なあ、コネシマ」
「何や」
「アブノーマリティに変質してから、死にたいと思ったことはあるか?」
「Aが来ない日は死にたくてしゃーないわ」
眠気に蕩けていたチワワが弱々しく吠える。
そうだ、このチワワは悲しみでもって飼い主と別れたいのだった。
死は救いではないが、明確に線引きをする別離である。
このアブノーマリティが死、或いは消滅を望むのは必然だった。
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志摩(プロフ) - H2Oさん» H2Oさん、閲覧ありがとうございます。アブノーマリティの設定はめちゃくちゃ悩んだので褒めて頂けて嬉しいです。更新頑張ります。 (2019年7月16日 8時) (レス) id: 4b0ab5b92a (このIDを非表示/違反報告)
H2O(プロフ) - コメント失礼します。このパロディとても好きです。待っていました。各アブノーマリティの設定も凝っていて、読んでいて世界観に飲み込まれました。これからの更新楽しみにしております。 (2019年7月16日 7時) (レス) id: e433076a9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:志摩 | 作成日時:2019年7月11日 0時