prince41 ページ41
.
そう言って私の手を握り締めて先を進み始めた。
ブツブツ文句は垂らしつつも、
そこにいつもとは違う少しだけ優しさがあって。
…おかしい。おかしすぎる。
一応警戒して表向きの仮面かぶってるのかな？
ここまで優しいのは珍しい気がする。
廉「おっ。ゴール見えてきたんじゃね？」
あ「あ、本当だ」
何度か道に迷いつつも、
ゾンビに出くわすことなくゴール付近まで
辿り着くことが出来た。
長かった…。
…と、安心したのも束の間。
あ「ひぃぃ…っ！！」
ゴールは目の前だと言うのに、
いきなり前後からまた唸り声を上げる
数人のゾンビが現れた。
廉「よし、このまま走って突っ切るぞ」
あ「えっ？むっ、無理無理無理！！」
私の言葉なんて聞く耳持たず、手を握り直し、
「せーのっ」と言う永瀬くんの
合図と共にゴールまで全力で走らされた。
.
あ「はぁっ、はぁっ…」
廉「あぁーっっ！！疲れたぁ…っ！！」
あ「もう最悪…っ、はぁはぁっ」
こっちは浴衣だって言うのに、
少しは気遣うこと出来ないんだろうか。
おかげで暑いし、
汗かいて浴衣が肌に引っ付いてるし。
廉「最高！の間違いちゃう？」
あ「あー…怖かったぁ…」
廉「やっぱ怖かったんやん」
あ「うるさいよ」
2人で切らす息を整えて
不意に目が合うと、
廉「ふっ…」
あ「ふふ…」
廉「はははっ」
あ「あははっ」
謎の笑いが込み上げてきて
耐えられず、お互いに声に出して笑っていた。
こんなこと、初めてかもしれない。
今まで永瀬くんと笑い合うとか絶対有り得ない、
絶対そんな日が来ることはないって勝手に断言してて、
永瀬くんと会うと、いつも辛辣なこと言われて
言い合いが絶えなかったのに。
まさかこんな日が来るなんて。
誰が想像したんだろう。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2817人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：rion
| 作成日時：2019年5月24日 14時
