第十四話 観光客 ページ16
下町は、随分と賑わっていた。
近々、下町で舞踏会があるのだとか。ああそういえば、そろそろお国のお気持ち程度のパーティーがあるものね。
それの影響かと、ツリーに飾りをつけている子供達の横を通り過ぎる。
私もこの子達ぐらいの歳になりたいな。過去に戻りたい。
そして何も無かったことにして、幸せに暮らすの。
「おねーさん！これ上届かないの〜、代わりに付けて？」
『…ええ、分かったわ。』
渡された、くす玉のような丸い飾り。
私が国に来た時も、そんな陳腐なもので祝われたっけ。懐かしいな、と飾りをつけた。
ありがとうと微笑む少女の頭を撫で、また歩き出す。
黒い影が、さっと路地裏に逃げたように見えた。
『………。』
観光客か、とその影を追いかける。今は手持ち無沙汰だが、意外と相手は小柄そうだったし、いざとなれば武器も奪えばいいだろう。
『…ごきげんよう、観光客様。ご案内しますわ。
地獄に。』
「……っ！！」
振り返ったその姿。その目と髪の色が同じ、鮮やかな紫を彩っていた。ローブに包まれた身は、ロボロより低い。
「うっ、うわああっ！」
振りかぶったその手には、小型のナイフが。
仕込んでいたかと思いながらも、動きがままなっていないなと彼女の手首を掴んだ。
ナイフを奪い、脇腹を刺す。引き抜くと同時に、顔や至る所に血が飛んだ。手は真っ赤だった。
「ぁ、いﾞっ…。」
ぶるぶると足を震わせ、こちらへ倒れてくるのをうまく掴む。彼女の腰につけていた無線が、鈍い音を鳴らした。雑音に紛れて、男の声が聞こえる。
「おい死神…っ！？おい、返事しろ！」
「ぺい、とさ、…」
か細い声を、彼女があげる。
恋仲か、はたまた仲間か。
『彼女は私が刺した。あなたは彼女の仲間かしら？』
通信の向こうから、低い声が聞こえる。だったらなんですか、と。俺の仲間になにしてんだ、だのと。
…仲間、か。
羨ましいなと、どこかでそう思う。
『あなた達は観光客としてここに来たの？』
彼女に聞くと同時に、通話の向こうの彼にも聞く。
「…単なる、調査です。」
『その調査がどの範囲に入るかによるけどね。
…はあ。西門から見て左手、真っ直ぐ行った突き当たりの路地よ。近くには噴水があるから、目立つ場所だと思うわ。
一応応急処置はしておくけれど、いつまで持つか分からないわよ。』
「な、…は、はあ？」
言い切った後、適当にそこらに無線を投げ捨てる。雑音はまだしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 872人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はしばみの揚げ物(プロフ) - 霜華さん» (レスつけてなかったです…！！！)はしばみよりすごい作品を理解してるかたですね…！？？！？更新ゆったりまったりですが頑張ります！！！ (2022年8月17日 20時) (
レス) id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
霜華(プロフ) - 常に冷静沈着で俯瞰し、諦観している感じの子が大好きマンだから読んでて楽しいです…！あとメンバーの性格(？)が色濃く表れていて好きです！更新頑張ってください！！ (2022年8月17日 19時) (レス) id: fd554933f3 (このIDを非表示/違反報告)
はしばみの揚げ物(プロフ) - ロックマさん» わあ！！ありがとうございます…っ！！！頑張ります！！！！ (2022年8月16日 15時) (レス) id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
ロックマ - むちゃくちゃ好きですこの作品!!!!! これからも頑張ってください (2022年8月16日 12時) (レス) @page19 id: 7ddd684455 (このIDを非表示/違反報告)
はしばみの揚げ物(プロフ) - イナリさん» こういう系のお話を書きたかったので…！！ノリと衝動で書いたので、足らない部分があるかもと思っていましたが、そう言ってもらえて嬉しいです！！(更新頻度はバラバラです生きてる時もあれば泥みたいになってる時もあります…笑)ちまちまと更新頑張っていきます！！ (2022年8月15日 20時) (レス) @page16 id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はしばみ | 作成日時：2022年8月13日 18時
