職業：女優２

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「A？」


「………ごめんね、巻き込んで」


「いや、それは全然いいんだけど。詳しく教えてくれる？」



亮ちゃんの服の裾を掴んでいた手が、亮ちゃんに握られる。
優しい瞳が私を真っ直ぐ見ていて、すんなりと言葉が出た。
これまでの事を話すと、亮ちゃんは握った私の手をさらに強く握って。



「なんで教えてくれなかったの？」


「みーちゃんの判断で、共演者に迷惑かからない様にって内緒にしてたの。ごめんね」



申し訳なくて、亮ちゃんの顔が見れなくて俯いてしまう。
すると亮ちゃんは握っていた私の手を離して、私をぎゅっと抱き締めてくれた。



「Aが悪いんじゃないから、謝らないで」



でも、と言葉を続ける亮ちゃん。



「前に言ったでしょ？ Aは俺が守るって。だから次からは俺にも頼ってよ」



あのときと同じ優しい声で、亮ちゃんはそう言ってくれた。



その後、アンケート用紙を持ったみーちゃんが楽屋に戻ってきた。
スタジオ内のごみ箱に捨てたと言っていたアンケート用紙は、実は彼女のスタジオのロッカーに隠されていたらしい。
台本も私物も、全てそこにあったと。



みーちゃんは監督に事情を話し、警察には届けず、彼女は退職する事になった。
マスコミ沙汰になって、配給元や共演者、スタッフに迷惑をかけないために。
私も無くなったものは全て返ってきたし、それでよかったと思っている。



動機は嫉妬だったと聞いた。
どうやら彼女は亮ちゃんの大ファンで。
初めて亮ちゃんと仕事が出来ると思っていたら、プライベートでも仲の良い私と共演。
しかも恋愛映画で、キスシーンもある。
嫉妬から私を困らせてやろう、という考えに至ったらしい。



このことは、亮ちゃん含め演者やスタッフには話していない。
気持ちのいい話ではないし、特に亮ちゃんは絶対に気にするから。



彼女の退職以降、何事もなく撮影出来ている。
でもあれ以来、亮ちゃんの過保護にさらに磨きがかかったのは言うまでもない。

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