日常の中の非日常

1話 ページ1

嫌いなもの。




花粉、湿っぽい風、肌の焼けるような暑さ。



必要以上に長い説教、手術が下手くそな医者、やる気のない研修医。





こんな感じで私には嫌いなものが多数存在する。




その中でも最も嫌いなのは、面倒くさいこと。


あ、ざっくりしすぎでしょって思った？
でも、本当に面倒くさいことはどんなジャンルであっても嫌い。





あ、そうそう。もう一つあった。
休み明けの出勤日。





今は休み明けの出勤日で面倒くさい仕事に向かう道中。

つまり、最も機嫌の悪いタイミングだ。





先週、手術後の家族説明が終わって、書類を整理し、よし帰ろう。帰ったら爆食いするぞ。と思って席を立った瞬間、医局長に背後から声をかけられた。




いい仕事があるんだけど興味ない？っていかにも胡散臭いセリフ。

大抵こういう仕事は面倒くさいし、逃げるに限る。


そう思った私は、今手一杯ですのでと言って逃げようとした。

まあ、逃げられなかったんだけど。






そこで提案されたのは、医療監修の仕事。
手技を俳優さんに教えて欲しいとのこと。




本当は、向こう側の意向として、男性医師を希望していたらしいが、あいにく三枝以外の男性医師はオペや外来の業務が。

三枝は、急遽学会に参加しているため対応ができない。




そこで白羽の矢が立ったのが、なぜか私。





28歳の割と新人の部類に入る私が絶対にやっていいことではないと思うけど、医局長はお前なら絶対ときめかないし、安全だし、意外と優秀だからと激推しして決まってしまったらしい。





意外と優秀だからと言われるのは嬉しいけど、ときめかないと安全はどういう意味なんだろうと思って聞いたけど、行けばわかるの一点張りで答えてくれなかった。



せめて30過ぎていれば断れるんだろうけど、まだまだ私も新人。

医局長に逆らえず結局引き受けることになってしまった。





ここか。
ミーティングルーム。



結局来ちゃったし、サクッと教えて早く病院戻ろう。





「失礼いたします。」

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