十八話 ページ18
「…すみません、この子に餌をあげなくてはいけないのでもう失礼します」
抱き上げた先生をひと撫でして、安室に軽く会釈をしてその場は失礼することにした。そろそろ先生だってお腹が空く頃だし、それに安室にあんな目線で見られたくない。何かに警戒するような目で。
「…西川さん、お詫びと言ってはなんですがポアロに来たらサービスしますよ」
大丈夫です、もう行かないんで。
「…それはどうも」
けど最近の失敗のお陰か言葉選びは慎重にした方が良いと思うので、建前で返事を返した。
本音ではもう二度と会いたくない。毎度毎度会っていれば耐性も付くのでは、とふと思った時もあったが、そんなことは一切無かった。私はこの男にこの街で偶然会った時から苦手だ。
立ち去る今で尚、私と藤堂さんに警戒の目を向けているし。
夜もすっかりふけてしまった。家に辿り着く頃には街灯も灯っており、住宅街は静まり返っていた。
「…それじゃ、夜ならいつでも家にいるからさ。遅くなければ好きな時間においで」
「…ありがとうございます」
藤堂さんは軽く笑みを浮かべ、「じゃ、また」と私の家の前で解散した。あの笑みが作り物では無い事からも個人的には彼を嫌ってはいない。
多分恋のせいだろう。
…いや、少々言い方に語弊があった。
一応というか、私も学生時代は純粋な乙女(？)だったので初恋くらいある。今は少しだけ冷めてはいるが、彼のことを好いている。
まあずっと傍にいたいなとは思っていた。けどそんな淡い願望もお引越しにより簡単に砕け散ったのである。
ウチは転勤族というものであり、その場に三年もいられなかった。
まあ名前は思い出せるし顔もほんわかとしか思い出せないがその子は私より年上で滅茶苦茶頭良くて…おっと、彼氏の自慢話みたいになってしまった。
まあ、離れ離れになった初恋の相手が藤堂さん…というわけでも無い。
ただ雰囲気が似てただけなのだ。だからだろうか、彼と話していても普通の人と話しているような嫌悪感というか、不快感が無い。
「だからと言ってずっと一緒にいたいわけじゃないけど」
ぼっちっちな私にはせんせーがいれば十分なのだ。
「にゃあん」
「先生疲れたかな。一緒に晩御飯食べよっか」
玄関の鍵で扉を解錠しながら、先生に話しかけた。先生は「なぁん」とまた呑気そうな鳴き声で鳴き、家に入るとまたいつものようにゴロゴロしだした。
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メランコリスト - Whiskyさん» 個人的にもスコッチさんは好きだったので生かしました。最後までご覧下さりありがとうございます。楽しんでもらえたのなら作者として嬉しく思います。 (2019年8月17日 1時) (
レス) id: 8d9394cd19 (このIDを非表示/違反報告)
Whisky - やっぱりヒロは生きてたんですね！押しなので嬉しいです。すごく面白かったです。 (2019年8月17日 0時) (レス) id: e4b3f2a326 (このIDを非表示/違反報告)
メランコリスト - まゆさん» この作品を見て下さりありがとうございます。続きが気になってもらえるとは…これからも面白いと思ってもらえるよう頑張ります。コメントありがとうございました。 (2019年8月14日 19時) (レス) id: 8d9394cd19 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2019年8月14日 19時) (レス) id: 35cf1a0a87 (このIDを非表示/違反報告)
メランコリスト - 氷雨さん» まさか応援コメが来るとは…ありがとうございます。ご期待に添えられるかどうかは分かりませんが、頑張ります。コメントありがとうございました。 (2019年8月14日 2時) (レス) id: 8d9394cd19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：メランコリスト | 作成日時：2019年8月11日 15時
