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君の記憶に焼き付けて。【観音坂独歩】 ページ44

俺は、君の記憶にどれだけ残れているのだろうか。
少しでも多く残れていたならいいな、なんて。
...そんなことを考えてしまうのは、今日が別れの日だからだろう。
”いつも通り”が今日で終わる。
光の差し込む教室も、やけに滑る廊下も、桜並木も。
全部、今日でお別れだ。
そして、大好きな君とも。
こんな地味な俺だけど、少しでも君の記憶に残っていたくて。
___忘れてほしくなくて。
そんなことを考えていたら、ふと廊下を歩く君を見つけて。
気が付いたら呼び止めていた。
『独歩くん、急にどうしたの?』
不思議そうに長い黒髪を揺らす彼女は、今日も変わらず綺麗で。
「いや、あの、もう卒業だなって思って、さ。」
しどろもどろになりながらも、しっかりと答える。
『そうだね...。随分と早かったなぁ...。』
感慨深そうに呟く彼女。
その途中で、サラリと長い髪を耳にかける仕草に、ドキドキした。
『独歩くんは高校生活、十分に楽しめた?』
にこにこと話題を振ってくれる。
そんな優しいところも、さり気ない気遣いをしてくれるところも、好きだ。
「俺は、大分楽しめたよ。」
Aさんのおかげで、なんて。
『私も色々と楽しかったな。ただ、ひとつだけ心残りがあって...。』
悩んだような表情を浮かべて、そう言う。
意外だった。
なんでも完璧にこなしてしまうような彼女に、心残りがあったなんて。
「その心残りって、一体?」
気になって尋ねると、
『大したことじゃないんだけど、好きな人にまだ告白してないなって。』
ショックだった。
流石に好きな人くらいはいるかな、と思っていたけど、まさか本当にいるだなんて。
まぁ、それはそうか。
うちの学年は、ぶっちゃけ俺以外全員イケメンみたいなもんだし。
...心に穴が空いたみたいに、痛かった。
あぁ、俺なんて、やっぱり君の目には映っていなかった。
ならば、せめて。
「...ごめん、Aさん。」
『え?』
ぱちぱちと瞬きをする彼女を、自分の元へと引き寄せる。
『ちょ、ちょっと、独歩くん?』
あたふたと慌てる彼女をしっかり抱き締めて、耳元で囁く。
「Aさんが好きなんだ。どうしようもないくらい。」
驚いたように固まってしまう彼女と目線を合わせて、一言、
「...ごめん。」
と呟いて、
そっとキスをした。
唇が離れると同時に、君は走ってどこかに行ってしまった。
多分、泣かせてしまったと思う。
この気持ちが報われることがないのなら、せめて。
___君の記憶に消えない傷として、俺を焼き付けて。

田舎に住む祖父母から、恋人である彼に会いたいと連絡が来たことを相談したら。(月華姫様リクエスト)【Buster Bros!!!・MAD TRIGGER CREW】→←またねって言うよ。【伊弉冉一二三】


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月川利乃(プロフ) - 真琴さん» ありがとうございます(´;ω;`)そんな風に思っていただけるなんて、本当に嬉しいです。まだまだ未熟者ですが、頑張っていきます! (2019年3月19日 20時) (レス) id: 8515e66b17 (このIDを非表示/違反報告)
真琴 - 完結おめでとうございます!とても大好きな作品です。続編も楽しく読ませていただいてます。これからも頑張って下さい! (2019年3月15日 0時) (レス) id: 5e6ad04f41 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» それとお知らせなのですが、こちらのお話の方が話数上限に達してしまい、続編を作成致しましたので、リクエストはそちらの方にお願いいたします_(._.)_いつでもお待ちしております! (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» 喜んでいただけたのなら幸いです!ホワイトデーネタ、実はうっかり今日投稿しそうになって焦りました(^_^;)明日は間違えないようにしっかり投稿します( ´∀`)b (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» こちらこそ、リクエストありがとうございました!筋肉本ってどんなのかな、なんて呑気に調べたら、とてつもない世界が広がっていて驚きました(笑)とりあえず誰かを脱がせようと思って抜擢されたのが左馬刻様と先生です。 (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月川利乃 | 作成日時:2019年2月22日 22時

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