春の匂い。【飴村乱数】 ページ39
＿＿＿春は、特別な匂いがする。
ぬるくなった風に溶けた桜の匂いや、暖かくなった太陽の匂い。
少しだけ、寂しい匂いもする。
「...。」
教室の窓の外を見て、暫し感傷に浸る。
そっと目を閉じると、楽しそうに話す声が聞こえてきて。
その中には、僕が密かに想いを寄せているAの声もあった。
彼女は唯一僕の本当の姿に気が付き、それでも尚、変わらず仲良くしてくれていた。
”嫌いになんてならないよ。だって、どっちも本当の乱数くんでしょ？”
前に、僕のことを嫌いにならないのか、と聞いた時に彼女はそう笑顔で答えた。
どんな僕も正面から受け入れてくれる彼女を、気付いたら好きになっていた。
ぱちりと目を開けて、教室を見回す。
友達であろう女子達と、楽しそうに話す彼女。
そんな彼女の姿も、今日以降、見ることは出来ないのか。
ならばせめて記憶に焼き付けておこうと、じっと見つめる。
「...。」
こんなに寂しくなるなんて、思わなかった。
出来るなら、この先もずっと彼女を見守っていたいけど。
『あれ、乱数くん？』
どうやら自分が思っていたよりも見つめ続けていたらしい。
視線に気が付いた彼女は、こっちに近づいてきた。
「あ〜、ごめん。ぼーっとしてたみたい。」
えへへ、と誤魔化すと、
『そう？』
そうしていつも通り、裏表のない笑顔を浮かべた。
それは、僕の大好きな笑顔。
『そうだ、乱数くん。』
「ん？どうしたの？」
『これ、似合うと思って。プレゼント。』
渡されたのは、パステルブルーのパーカーだった。
「え、これって結構高いんじゃないの？悪いよ。」
正直、好みのデザインだったけど、貰うのは気が引ける。
『いいの。いつも仲良くしてくれるお礼だよ。』
微笑む彼女を見て、受け取らない方が失礼だと思い、そっと受け取る。
「ありがとう。」
『それと、ね。』
はい、と渡されたのは、携帯番号とLINEのIDが書かれたメモだった。
「えっ...、」
『今まで仲良くしてくれてありがとう。これからも宜しくね！』
そう言って笑う彼女があまりにも綺麗で、スーッと涙が零れる。
『あれ、ごめんね？』
「違うよ。その、嬉しくて...。」
嬉しすぎて涙が止まらない、なんて。
『...。』
気が付いたら彼女も、僕と同じように泣いていた。
「...ちょっと、Aまで泣かないでよ。」
『その、嬉しくて。』
頬を少し染めるA。
＿＿＿ねぇ。それは、期待してもいいってこと？
変わり始める僕達の関係。
ふと深呼吸をしたら、優しい春の匂いで満たされた。
溢れ出すのは。【夢野幻太郎】→←貴女は知らないだろうけど。【毒島メイソン理鶯】
ラッキーアイテム
帽子
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月川利乃(プロフ) - 真琴さん» ありがとうございます（´；ω；｀）そんな風に思っていただけるなんて、本当に嬉しいです。まだまだ未熟者ですが、頑張っていきます！ (2019年3月19日 20時) (
レス) id: 8515e66b17 (このIDを非表示/違反報告)
真琴 - 完結おめでとうございます！とても大好きな作品です。続編も楽しく読ませていただいてます。これからも頑張って下さい！ (2019年3月15日 0時) (レス) id: 5e6ad04f41 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» それとお知らせなのですが、こちらのお話の方が話数上限に達してしまい、続編を作成致しましたので、リクエストはそちらの方にお願いいたします＿（．＿．）＿いつでもお待ちしております！ (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» 喜んでいただけたのなら幸いです！ホワイトデーネタ、実はうっかり今日投稿しそうになって焦りました（＾＿＾；）明日は間違えないようにしっかり投稿します（ ´∀｀）ｂ (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» こちらこそ、リクエストありがとうございました！筋肉本ってどんなのかな、なんて呑気に調べたら、とてつもない世界が広がっていて驚きました（笑）とりあえず誰かを脱がせようと思って抜擢されたのが左馬刻様と先生です。 (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月川利乃 | 作成日時：2019年2月22日 22時
