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もしも願いが叶うなら。【入間銃兎】 ページ37

『銃兎、卒業おめでとう!』
「Aも、おめでとうございます。無事に卒業出来て良かったですね。」
そう言って、恋人であるAをからかう。
『あはは、割と笑い事じゃないから、そのことには触れないで。』
...どうやら彼女を見くびっていたようだ。
まさか、本当に危なかったのか。
「わかりました。これ以上は触れないようにします。」
『うん。』
いつも通りの笑顔を浮かべるA。
私はその笑顔が何よりも好きだ。
偽善だらけのこの世界で、彼女の笑顔はいつもまっさらだった。
そんなところに、きっと惹かれたんだろう。
『ねぇ、銃兎?』
「何ですか?」
いつになく真剣な声音で話しかけられて。
『...大事な話があるんだけど、いいかな?』
「構いませんよ。」
にこりと笑いながら返すと、
『あのね、私と別れてほしいの。』
「...え?」
耳を疑った。
別れてほしいだなんて。
「嘘、ですよね...?」
自分でもわかるくらい、声が震えている。
『ううん、本当だよ。』
冷水を浴びさせられたような気分だ。
「せめて、理由を聞かせてくれないでしょうか?」
このままでは納得出来ないと思い、そう問いかける。
『私ね、春から外国に留学するの。』
「...は?」
そんな話、一度も聞いたことがない。
『だから、もう銃兎とは付き合えない。ごめんね?』
こんなにも唐突に、別れというものはやってくるのか。
「遠距離でも構いません!何なら会いに行きます!」
必死に呼びかけるも、
『ごめんね。』の一点張りで。
泣いて縋っても、聞き入れてはくれなくて。
...苦い思いを胸に残したまま、私達はそれぞれの道へと歩き出した。

___

あの卒業式の日から2年が経った今、私は20歳になった。
いつまでも忘れることのできない、苦い思い出。
でも、私は思うんです。
あの時、本当はAも泣いていたんじゃないかって。
何故なら、私の背中を撫でながら『ごめんね。』と言う声が、私以上に震えていたから。
去り行く貴女を引き止めていたなら、何か変わったんでしょうか。
答えなんて、今でもわからないまま。

___

”一番大切なものは、失ってから初めて気付く。”
そんなものは所詮、デタラメだろう。
あの時までは確かにそう思っていた。
でも、私も決して例外ではなかったんですね。
最後まで、貴女の気持ちに気付けなかった。
ただ、貴女のいない日々の中で、わかったんです。
会えなくなることの本当の意味。
もしもひとつだけ願いが叶うならば、もう一度だけ、貴女に会いたい。

貴女は知らないだろうけど。【毒島メイソン理鶯】→←これからも。【碧棺左馬刻】


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月川利乃(プロフ) - 真琴さん» ありがとうございます(´;ω;`)そんな風に思っていただけるなんて、本当に嬉しいです。まだまだ未熟者ですが、頑張っていきます! (2019年3月19日 20時) (レス) id: 8515e66b17 (このIDを非表示/違反報告)
真琴 - 完結おめでとうございます!とても大好きな作品です。続編も楽しく読ませていただいてます。これからも頑張って下さい! (2019年3月15日 0時) (レス) id: 5e6ad04f41 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» それとお知らせなのですが、こちらのお話の方が話数上限に達してしまい、続編を作成致しましたので、リクエストはそちらの方にお願いいたします_(._.)_いつでもお待ちしております! (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» 喜んでいただけたのなら幸いです!ホワイトデーネタ、実はうっかり今日投稿しそうになって焦りました(^_^;)明日は間違えないようにしっかり投稿します( ´∀`)b (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» こちらこそ、リクエストありがとうございました!筋肉本ってどんなのかな、なんて呑気に調べたら、とてつもない世界が広がっていて驚きました(笑)とりあえず誰かを脱がせようと思って抜擢されたのが左馬刻様と先生です。 (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月川利乃 | 作成日時:2019年2月22日 22時

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