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いつも隣に。【山田一郎】 ページ33

『一郎!卒業おめでとう!』
「おう。Aも、おめでとう。」
互いに胸に花を付けた姿で、えへへ、と笑い合う。
渡り廊下を通り行く人達も皆一様に、手に卒業証書を持ち、胸に花を付けていた。
『...もう卒業だってさ。早いね。』
「そうだな。ついこの間入学したと思ったのに。」
はらはらと舞い落ちる桜を見つめて感慨深そうに言うAに、そう返す。
___気が付いたら、いつも隣に居た。
無邪気に笑う彼女に、俺はいつの間にか恋をしていた。
手を伸ばせば届く距離に居るのに、あと一歩がどうしても踏み出せなくて。
それは多分、今の心地良い関係を壊したくないと俺自身が願っているからなんだろう。
想いを伝えて今の関係を壊してしまうくらいなら、何も言わないと決めたのは俺だ。
でも、ふとした瞬間いつも頭を過るのは、
「もし告白していたら」
「もし付き合えることになっていたら」
なんて都合の良い絵空事ばかりだった。
後悔をしていないと言ったら嘘になる。
隣でにこにこと笑うAとも、もう会えなくなるんだ。
「あと少しだけ、」
隣に居たい。
『ん?何か言った?』
どうやら声に出てたらしい。
そんなことに気が付かないほど、俺は彼女のことばかり考えていた。
もう会えなくなるのなら、この際、全てを打ち明けてもいいんじゃないか。
最後に気持ちを伝えても、咎められはしないんじゃないか。
「なぁ、A。」
『どうしたの?』
いつもと変わらずにこにこと笑う彼女を記憶に留めながら、話を続ける。
「この三年間、色々なことがあったよな。」
『そうだね。』
過去の思い出を振り返っているのか、懐かしそうに笑うA。
「俺達もくだらないことで大喧嘩したりさ、ガキだったよな。」
『あれは一郎が私のクリームパンを食べたのが悪いんでしょ。』
「いいや、お前も俺のカレーパン食ってただろ。」
懐かしい思い出に、二人で微笑む。
___あぁ、この時間が永遠に続けばいいのに。
「俺さ、」
『何?今日はやけに色々話すね。』
「Aのことが、ずっと好きだったんだ。」
『え?』
「いや、今でも好きなんだ。」
『あはは、なんだ、そんなことかぁ。』
「なっ、そんなこととはなんだ!」
『私、知ってたよ。一郎が私を好きでいてくれてること。
 だから私も、一郎にはバレてると思ってた。
 私もね、一郎が好きだよ。』
...そう言った彼女が浮かべていたのは、俺がずっと見たかった笑顔。
いつも隣に居た俺達が、ようやく恋人同士になれた日。

雨が上がれば。【山田二郎】→←彼に告白されたのを、「私も好きだよ?これからも宜しくね!」なんて友情的な意味だと勘違いしたら。(どぅるじ様リクエスト)【Fling Posse・麻天狼】


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月川利乃(プロフ) - 真琴さん» ありがとうございます(´;ω;`)そんな風に思っていただけるなんて、本当に嬉しいです。まだまだ未熟者ですが、頑張っていきます! (2019年3月19日 20時) (レス) id: 8515e66b17 (このIDを非表示/違反報告)
真琴 - 完結おめでとうございます!とても大好きな作品です。続編も楽しく読ませていただいてます。これからも頑張って下さい! (2019年3月15日 0時) (レス) id: 5e6ad04f41 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» それとお知らせなのですが、こちらのお話の方が話数上限に達してしまい、続編を作成致しましたので、リクエストはそちらの方にお願いいたします_(._.)_いつでもお待ちしております! (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» 喜んでいただけたのなら幸いです!ホワイトデーネタ、実はうっかり今日投稿しそうになって焦りました(^_^;)明日は間違えないようにしっかり投稿します( ´∀`)b (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» こちらこそ、リクエストありがとうございました!筋肉本ってどんなのかな、なんて呑気に調べたら、とてつもない世界が広がっていて驚きました(笑)とりあえず誰かを脱がせようと思って抜擢されたのが左馬刻様と先生です。 (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月川利乃 | 作成日時:2019年2月22日 22時

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