谷崎家の元妹は (ページ20)

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太宰くんがいなくなった所で、私には何の問題もない。寧ろストレスの要因が消えてくれた。

目の前に置かれている太宰くんが勝手に作ってきた合鍵を見つめた私は、そう思い込むことにした。

馬鹿丁寧に鍵を返しにくる位なら一声くらい掛けてから消えれば良いものを、そうすれば私も嫌味の1つでも返してやったのに。

『あぁー！』
思いっきり叫んでから鍵を入れていた貝殻の形の鍵置き場を投げた。
太宰くんが私の部屋を居心地が良くて自○したくなると言うから買ったものだ。
殺風景な部屋が居心地良いと言うなら、逆に飾って仕舞えと思ったから。

ガシャンと割れる音がする。先程の叫び声と合わせたら中々のご近所迷惑だったかもしれない。
貝殻の形をしていた鍵置き場だった物を見つめながらそう思った。

＊＊＊＊＊

────何でこんな事になったのだろう

数刻前。

月が綺麗だったから、それだけの理由で私は送ってくれていた車を降り、夜道を独り歩いていた。

てくてくと足を進め道を歩んでいると、太宰くんと出会った場所の近く迄来ていた。
そこを通り過ぎようとしたその時、

「みゃー」

何処からか猫の声がした。
猫は夜行性と聞くし別に珍しい事でもない。
ただ、私は辺りを見渡した。何となく、猫の声が必死だった気がしたから。

ダンボール箱。近くに猫が隠れてそうな場所はそこしかなかった。
近くまで行って中を覗く。
中には片手に収まりそうなサイズの薄汚れた猫が入っていた。

「みゃお」

『えぇ？』

何時からそこにいたのか、寂しかったのかもしれない。手を入れると子猫は擦り寄ってきた。

太宰くんと出会った時を思い出した。
太宰くんよりは余程に可愛いけれども

周りを見渡しても誰もいなかった。
私が見なかったフリをすればこの子はきっと死ぬのだろう。

『取り敢えず、家に来て』

そう呟いて子猫を拾い上げた。
殆ど重さのない小さな猫は、甘える様に私に擦り寄ってきた。