夢のまた夢【跡部景吾】 ページ1
彼が隣から離れていく夢を見た。『ごめんな』とただ一言残してあっという間に消えていった。
残された私はただ一人、何も出来ず何も考えられず。空っぽな心の中に一滴の滴を探していた。
*
目を覚ました。目元が濡れているのを感じた。
隣を向けばいつも通り彼が眠っている。それを見て夢だったんだと落ちついた。彼に触れたくて、どこにも行って欲しくなくてそっと唇を落とす。
「……ん」
それはまるで童話のキスのように。彼がゆっくりと目を覚ます。悲しいほどに綺麗なアイスブルーの瞳が私を捕らえた。
「……おはよう、A」
「うん、おはよう」
そうゆっくりと微笑めば彼が私の髪を撫で頬を撫で。ゆっくりと楽しむような長くて優しい口付けを。
唇が離れて、その腕に包まれて。私幸せだなぁって。ふとあの夢をもう一度思い出した。
「……景吾は、私の前からいなくなったりしないよね?」
「急にどうした?」
切なくて、苦しくて。私こんなにも好きなのに、もしかして私だけなのかななんて。
「はっ、俺がお前の隣からいなくなるわけねーだろ?安心しろ」
それでも彼はいつもと変わらぬ笑みで私に幸せを与えてくれたから。ちょっとだけ落ち着いてぎゅっと抱き締め返す。
しばらくして、彼が欠伸をした。口元を手で抑えて、片目をつぶって。それすらもどうしてそんなに美しいんだろう。
「……ん、悪いな、昨日も忙しくて疲れてんだ」
「じゃあ今日はせっかく休みだしもう一回寝よっか?」
「ああ、お前も一緒に寝てくれるか?」
俺だってお前が俺の側からいなくなったりしないか不安になるんだよ。そう言って苦笑いをした潤んだ瞳を見つめて、
「もちろん」
そうして、ゆっくり夢へと落ちていく。
*
目を覚まして、全てを思い出した。
隣にいた彼はもういない。
それが全て、夢だった事を__
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のん(プロフ) - あむさん» はじめまして、ありがとうございます。永遠を与える魔法使いになれずに申し訳ありません。今はまだ、あまり更新出来ませんが、また力を手に入れて、今は動いていない長編も必ず続きを紡いでみせます。嬉しいお言葉、本当にありがとうございました。 (2019年8月25日 21時) (レス) id: d9f3c28035 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 本眼鏡さん» 本当にありがとうございました。私もいつも、本眼鏡さんのコメントに力を貰っていました。これからはもう少し長い話で、私のペースで少しずつ書いていこうと思います。私もここ1ヶ月くらい体調を崩してるので何とも言えませんが……これからも、よろしくお願いします! (2019年8月25日 21時) (レス) id: d9f3c28035 (このIDを非表示/違反報告)
あむ(プロフ) - 初コメ失礼です!今まで本当に素敵なお話有難う御座いました。のんさんの紡ぐ言葉が私には綺麗で、こんなお話書きたいな、と読むたび思っていました。永遠なんてはずはないのに、ずっと続くと思っていました。またお話を書かれるときはまた読みますね。お疲れ様でした。 (2019年8月25日 20時) (レス) id: be177122fb (このIDを非表示/違反報告)
本眼鏡(プロフ) - 「のんさん、今までありがとう。僕達のことを好きって言ってくれて嬉しいよ」「君には、多くの苦労をかけてしまったね…でも、本当に感謝してる。ありがとう」「ずっと気ぃ張っとって、疲れたやろ?ゆっくり休んどき」最後に私からも……本当にありがとうございました (2019年8月25日 19時) (レス) id: 2c8ca3d3d6 (このIDを非表示/違反報告)
本眼鏡(プロフ) - お久しぶりです。前回の書き込みから早1ヶ月、まだまだ体調が優れない時も多いし食事もまともに取れてませんが、そんな時はいつものんさんの作品に助けられました。もう終わってしまうのかという寂しさはありますが、これからもぜひ仲良くして頂けると嬉しいです (2019年8月25日 19時) (レス) id: 2c8ca3d3d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のん | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nonhp319305/
作成日時:2019年3月21日 7時