6話 ページ6
思わず顔を上げると、彼女の頭をポカリと叩く 加州清光の姿。
「えぇー。折角、会えたことが嬉しかったの!」
「迫り過ぎて、誰だってひくよ。」
そう言いながら別本丸の加州清光は掴まれていた私の腕を解放させて、
ごめんね。 と、私に謝った。
「い、え。大丈夫です。」
こんな別本丸の刀剣に謝られるなんて恐れ多い。
私もオドオドしてしまってすみません。と、
ぺこりと頭を下げる。
すると、彼の口から
「えっ‥」
と、いう素っ頓狂な声が漏れた。
顔を上げると、彼は信じられないものを見たような顔で、私と もう一方の私を交互に見つめている。
「‥‥‥うっそ、頭下げた。
これが噂の個体差ってやつ?」
ピキッと 空気にヒビが入る音がした。
しかし、ゴゴゴゴゴゴと 肩を震わせるのは
目の前の私で、「ほぉ‥」と、驚くほど低い声が飛び出す。
どうやら、逆鱗に触れたらしい。
「つまり、私は頭を下げない奴だと、言いたいのかね?加州くん。」
「いや、プライドがエベレストのくせに何言ってんの?」
「そんなこと言ったら皆、そうだろ!」
「アンタは特に酷いからね!」
‥‥‥。
す、凄い。 こんな風な会話が出来るなんて。
完全に置いていかれた私は 繰り広げられる
言い合いの嵐をぽかんと見つめてしまう。
羨ましい。こんな風に誰かと会話できたら。
「大丈夫?」とか、「辛かったら言ってね」とか、そんな気遣いが無い会話が 私には輝いて見えた。
私の存在に気付いたらしい二人はハッとして、「あぁ、ごめんね。」と、謝ってくる。
「いえ、大丈夫です。」
元はと言えば じっと見つめた挙句、何にも応えない私が悪いのに 気を遣わせて申し訳ない。
しかし、いつものように笑顔で返すと、
「‥‥なにそれ。」と、またもや低い声が聞こえてきた。
「えっ、」
「何?その笑顔! そんなハリボテみたいな笑顔! 貴女、本当に私?」
「‼‥は、ハリボテ?」
何故か図星を突かれた気がして、サァーと血の気が引いていく。私はグランと身体が浮くような気分になった。
ちょっと、やめなって、 と隣から加州さんが止めているが、目の前の私は 私をキッと睨む。
「気付かないとでも思ってるの?
それに、不思議に思っていたんだけど、
貴女から 強く感じる別の気配‥。
これは、
‥‥鶴丸国永?」
ヒュッと私の喉がなった。
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あめみや - 急な一期一振に口角が下がりません。ありがとうございました (2月23日 20時) (レス) @page30 id: d39539a2df (このIDを非表示/違反報告)
まかろん(プロフ) - 凄く感動しました、、。 (2020年8月13日 0時) (レス) id: 45c17c16c0 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - すごーくおもしろかったです! (2020年3月28日 10時) (レス) id: f390aacf74 (このIDを非表示/違反報告)
anao10(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れさまでした…!そわそわする展開で毎話毎話じっくりと読み込んでしまいました…笑。次回作品も楽しみです。 (2019年10月24日 0時) (レス) id: 8c68a256f2 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!!作者様の書かれる作品は素敵な物ばかりで、本当に大好きです!!毎回、刀剣男士との距離の描き方が上手で、毎回楽しみに読んでおります!次のお話も楽しみにしてます… (2019年10月22日 23時) (レス) id: 8cdd57f528 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:杏子メロンパン | 作成日時:2019年10月6日 15時