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23話 ページ23

彼の考えは分からない、でも、その提案には惹かれるものがあった。

「‥‥本当、ですか?」

政府の主張は正しい、この本丸、そして戦のことを思えば、今すぐにでも私は刀解されるべきなのだ。
このまま、時間が経てば私は霊力が足りなくなる。そしたらまた、誰かに貰わなければいけない。

でも、きっと主様は私を刀解することは出来ないだろう。
ましてや、折ることだって。刀剣達も同様だ。


結局、何にも変わらないのなら進歩は無い。
進歩していないのならそれは 後退同然だ。

「私を斬ってくれるのですか?
私を斬ることで貴方が穢れたりとか、‥‥迷惑はかかりませんか?」

私はしゃがみ込み、食いつくような勢いで、気がかりだったことも同時に尋ねた。
すると、そこで初めて三日月は目を見開く。

「‥驚いたな。 其方はこんな時でも俺の心配をするのか?」
「え?」
「‥いや、 大丈夫だ。穢れたりはせんよ。」
「‥‥そ、うですか。それなら‥」

目を伏せて拳を固く握った。

他人ばかりあてにして、自分で終わろうとしない私はずるいだろうか。
自分で折ろうと思えばいつだって出来たのだ。

でも、誰が自分で死にたいなんて思う。
私の存在が重荷なのは分かってる。
でも、今、ここにいるから、身体があるから、心があるから、
叶わない願いをまだ捨てきれないから、
生きたいと、ここに在りたいと思うのだ。
それが誰にも言えない私の本心なのだ。


誰も知らない。分かるはずもない。


気にすることないと言いながらも審神者を心では責める罪悪感や自己嫌悪も。仲間が出陣する時、自分よりも後に来た刀がどんどん練度を上げて誉を貰った時に感じる 劣等感も羨望も。
悩んで流した涙の数も、悔しさも。

私のこんな痛みなんて、誰も、誰も。

一体誰が分かってくれるというのだ。

それを、彼は終わらせてくれるというのだ。
何もかも消してくれるというのだ。
この美しい月の化身である彼の手で、私が堕ちる前に、誰かの心に傷を残すことなく
折れることが出来る。

私は一度ゆっくり深呼吸をして、気持ちを落ち着かせた。

「三日月さん‥」
「ん?」
「ど、うか‥‥‥どうか、 私を」

「ーーーー何をしている」

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あめみや - 急な一期一振に口角が下がりません。ありがとうございました (2月23日 20時) (レス) @page30 id: d39539a2df (このIDを非表示/違反報告)
まかろん(プロフ) - 凄く感動しました、、。 (2020年8月13日 0時) (レス) id: 45c17c16c0 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - すごーくおもしろかったです! (2020年3月28日 10時) (レス) id: f390aacf74 (このIDを非表示/違反報告)
anao10(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れさまでした…!そわそわする展開で毎話毎話じっくりと読み込んでしまいました…笑。次回作品も楽しみです。 (2019年10月24日 0時) (レス) id: 8c68a256f2 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!!作者様の書かれる作品は素敵な物ばかりで、本当に大好きです!!毎回、刀剣男士との距離の描き方が上手で、毎回楽しみに読んでおります!次のお話も楽しみにしてます… (2019年10月22日 23時) (レス) id: 8cdd57f528 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:杏子メロンパン | 作成日時:2019年10月6日 15時

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