ハロー、ハロー、届きますか？

日記:35日目 ページ42

卒業式が終わった。

卒業生は起立と礼が大変そうだった。他人事のように式を受け、気がつけばプログラムは終わっていた。

2年生は卒業生を門送りして式の片付けをするらしい。だから、言うなら今。
本当は言う時間なんてなくて無理やりつくったラストチャンスだった。自分から行ってなんぼ、受け身じゃダメなんだって。





*




2年生の列を抜けて3年生がアルバムを書きあっている場に急ぐ。誰が誰だかわからないくらいもみくちゃで自分の現在地さえもわからなくなりそうだ。

これだけの人から夜久さんを見つける。憧れ続けたあの背中。



　『夜久さんっ！！！』



メッセージを書き込むために背中を丸めていた夜久さんはハッと顔を上げて少し困った表情をした。



　『……少し、お時間、良いですか』


　夜久「………おう」



私達がいる場所は人がいないワケじゃない。ガヤガヤ騒がしい。そして、目の前の人の表情が私に悟らせる。

___……きっとこれはダメなんだろうなぁ。





でももう後には引けない。
大丈夫だ、もう終わりなんだから。

それもこれも全部。
卒業したら何も残らないじゃない。





　『…好きです！』




多分、ずっと。

届かなくても。






　夜久「…ありがとう」






夜久さんが口を紡ぐ。
困らせて、ごめんなさい。

あれだけつきまとってたらわかるんだよ、夜久さんのこたえくらい。





　夜久「………ごめん…っ、…」









うん、後悔なんてしてないの。

見上げた空は清々しいほどの青だった。

日記:36日目→←日記:34日目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す