傾国のひとりごと (ページ48)

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　　　肆ページ48

「腹立たしくはないのか」

「それは、まあ言うまでもなく。でも、壬氏さまのせいではありません」
Aは淡々と答える。

「いや、申し訳なかった」

上から降りかかってくる重い声。

(珍しく凹んで、素直ね)

Aが見上げようとすると、頭にさくっと何かが刺さった。

「...痛いのですが」
「そうか、やる」

甘ったるい笑みではなく、どこか憂いと気恥ずかしさの混じった顔の壬氏。

頭を触ると、何もつけていないはずの髪に冷たい金属の感触がする。

「じゃあ、あとは会場でな」

後姿のまま、壬氏は東屋を去った。

　

「あー、いいなあ」

みんなのところに戻るなり桜花がAの髪を指差し、声を上げた。

Aはさっき壬氏に何か刺されたところを触り、それを引き抜く。
刺さっていたのは男物の銀の簪だった。

桜花がもの欲しそうに見ていたのであげようかと思ったが、他のふたりも同じ顔をしていたので手を引っ込めるしかない。
紅娘は苦笑している。

「もう、早速約束破ったのね」

玉葉妃がすねた顔をして見ている。
そして、Aの持っていた簪を取ると、結わえた頭にきれいに挿してくれた。

「私だけの侍女じゃなくなったじゃない」

幸か不幸か、Aは宮中、特に上流階級の話に疎い。
それが示す意味もわかっていなかった。

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キリがそこそこ良いので、続編に移行します。