俺達のサジャ XIV

君のヒーロー (JN side) ページ41

(JN side)



日本を訪れるのは久しぶりだ。

バレて騒ぎにならないかと心配していたが、しっかりと着込んで顔を隠しているだけでなく、警護や通訳の人も最小限の人数で私服だったからか、案外すんなりと入国できた。

そこから近くのホテルで隔離期間を過ごすこと数日間。



解放されるなり、レンタカーを借りて急いで秋田へと向かった。

嬉しいことに予定よりもだいぶ早く、Aの家に着くことになりそうだ。
そう連絡を入れたのだけど、なかなか既読がつかない。

もしかしたら、既読がつくよりも先に俺が着いちゃうかもしれない。




この2ヶ月は地獄みたいに長かった。
Aとこんなに長い間離れたのは初めてだった。

Aと離れて3日が経った時点で、いつもどうやって毎日を過ごしていたのか分からなくなった。

何か話そうとしてAの名前を呼んだ時、隣にいないことに気づく。
それを何回やったことだろう。


俺、Aと話してない時って何してたっけ？

仕事や練習がある時はまだ大丈夫だったけど、それ以外の時はどうしてたのか全く思い出せない。



……だけど、さすがに1週間くらい経った頃には、ここにいないAの名前を間違えて呼んでしまうことは無くなった。


でもそれが、俺にはむしろ怖かった。

なんだか、Aのいない日が当たり前になってきているみたいで。



早く、早く行かないと。

もしかしたら、遅くなったら取り返しのつかないことになるかもしれないから。

その前に、しっかり手を繋がなくちゃ。




ナビに映る目的地との距離が近付くにつれて、胸が高鳴る。

最初に何と声をかけるべきだろう。


やっぱり、「久しぶり」かな？無難だけど。
「元気だった？」は止めておこう、元気なはずがないし。


あとは……ご飯は食べてるかな？ちゃんと眠れてるかな？

具合は大丈夫かな。
目眩とか吐き気とかもまだあるのかな。


外には出てるのかな。

Aは俺と似てて、一日中家にこもれるタイプだから……そのまま家にこもりっぱなしになってないかな。
たまには息抜きがてら、散歩するのも良いと思うけど。

もしAの体調が良かったら、一緒に近くを散歩とかできないかな。
あ、でもさすがにまだ寒いよね。


考えれば考えるほど、話したいことや聞きたいことが溢れてくる。
何せ、2ヶ月分だ。

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