追想-TUISOU-１０ Secretな彼女番外編 (ページ44)

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そう、
リンの薬指には結婚指輪をしていなかったからだ

「ん？許嫁とやらとしたよ、
でも、すぐに別れたけど
というか、形だけ」

「形だけ？別れた？」

「あぁ、うん。
すごく優しくて、頭もよくて、イケメンだったけど
もったいないことしたなぁ
でも
彼も私と同じだったから」

「同じ？」

「そう同じ・・・
相手にも想う人がいたのよ
家同士が決めた結婚でも
本人の意思はまったく別のところに
お互いはあったわけ」

リンは、別れた後も
俺を想っていてくれてたのかなと思うと
少しだけ心臓が速く鼓動を打った

「そういう翔だって結婚したじゃん
あ、お祝い言うの忘れてた」

そう言ってグラスを上げ
乾杯のフリをする

「ありがとう」

俺はリンをどうしたいわけじゃないけれど、
急に現実に戻されたような気がして
冷静になった

「でも、ごめん、
芸能ニュースでしか目にしなかったから
翔も言ってくれた良かったのに
翔もいたんだ許嫁とやらなんちゃら」

俺は当時の事を急に思い出し
本当のことを言わず
事務所で考えたシナリオを
発表したんだ

「あぁ、違うんだ
それはまぁオトナの事情ってやつで・・・
正確には、ほんとたまたま現場で出会ったというか」

「オトナの事情？」

「あぁ、俺さマジで知らなくて
その、子どもがいたこと？」

「え？どういうこと？」

「いや、だから・・・その
時系列で言うと、
26の時に彼女とは一度出会って
そのあと3年前まで一度も会ったことも無かったんだ
ましてや、名前すら知らなくて」

「は？え？意味わかんない」

「あ・・・なんだろ、これ
俺なんか自分で首絞めてねぇか」

「いや、意味がわかんないだけ」

「うん、
その誰にも、それこそテッチや黒川にも言ってないんだけど
ていうか、
ここで初めて人に話すんだけど」

「それが私で大丈夫？」

「あぁ、いや、大丈夫かどうかっていうか
俺のほうなんだけど
人間性が疑われそうで」

「もう疑ってるわ」

「っておい」

ツッコむとすぐに
声を出して笑うリン

「いや、実はさリンと勢いで別れて、俺別の彼女と付き合っただろ？」

「思い出したくない過去だわ」

「あはは、いや、
それでその彼女と別れました
でも、まぁ、特定の彼女は作るつもりはないけど、
そのさ」

「あぁ、ワンナイト的な？」

「まぁそういうことなんだけど、
あ、ここで弁解する気ないけど、
彼女にも事情があったんだよ。
って俺何話してるんだろ」