追想-TUISOU-１０ Secretな彼女番外編 (ページ28)

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調度、１０年前、
嵐の晩にここに初めて来たとき、
ここは暗くて何も見えなくて
雨を逃れるように慌てて部屋に入ったんだ
そして
心に刻むように、その時を一緒に共有し
嵐がやまないことをどれだけ願ったっけ
でも
あくる朝
俺はこの景色を明るい日差しの中で見たんだよな

リンと共に・・・

あの時は、土が見えてて丘の下の町まで見渡せたけれど
今は低い棚田で緑に覆われて、
街は微かに見えるくらいだった

もしかしたら、当時、気づかなかっただけかもしれないけれど、

この家の横に、農道らしき道があり
その先には、また大きな建物があり
そこから、トラックが出て行くのが見えた

10年という月日が景色をもすっかり変えていた

しばらくして、
食器が重なるような音がし
俺はそっちを見る

微かにドアが開いてはすぐ閉じ、
また開いてはすぐ閉じ

思わず、クスっと笑い

その扉に行き
ドアを開けると
トレイの上に食器を乗せたリンが
俺の顔を見て
気まずそうな顔をした

「ったく、全部一気に持ってこようとするからだろ？ほら」

そう言って俺はドアを開けると

「メェルシっ」

と笑った

「何がメルシだよ
てか変わんねぇな・・・ほんと」

「そう？まぁ、基本、人は変わらないよ・・
あ、容姿は変わるけどね」

そう言って笑ったリン

「そうか？リンは全然変わらないと思うけど？
まぁ、それなりに・・・」

「それ以上言ったら刺すから」

そう言って、不敵に笑う

「嘘冗談だって」

「あぁ、ごめん、もうちょっと待ってて
1回では運べなかったから」

そう言って、食器を置き
向きを変えた

「そうだね、
食器だけだとエアで食べなきゃいけなくなるしね」

「別にエアでもいいけど？」

「そうする？」

「バカじゃない？あはは」

そう言って笑ってまた再び、部屋に戻った

なんだろう、
時が戻されてる気がする

俺は、懐かしさと共に
変わらない土の香りがする風に目を閉じた

すると
今度は自ら

「翔っ、開けてっ」

と、中から叫ぶ声がする

「あぁ、はいはい」

俺が再びドアに向かい
開けてやると

「ハイは１回」

「あはは、それ俺の奥さんもよく言う」

と言って、思わずしまったと
言葉を飲む

でもリンは

「あはは、やっぱり？
注意するところは一緒だ」

と、何も無かったかのように笑った

でも
それが少し残念な気持ちになり
また、その残念な気持ちになった自分が
一体何を期待してるんだろうと
さらに、がっかりする