追想-TUISOU-１０ Secretな彼女番外編 (ページ11)

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「何？」

雨でぬれた前髪を指でそのまま耳にかけ振り返る

「いや・・・」

一瞬たじろぐ俺

「何？とりあえず、この列車逃すと
本気で帰れなくなるから、先に乗らない？

「あ・・うん」

俺の不甲斐なさと言ったら最悪だった

TGVの中でリンは終始無言だった
隣に座るリンが俺と目を合わすことなく、通路の先を眺めている
横にはリンの手があり
俺は、それに触れられずにいた

いつもなら、何も考えずに
きっと触れていたと思う。

目に見えない壁
ゴーという、猛烈なスピードで嵐の中を走り抜けていくTGV

でも、俺にはわざわざフランスまで追いかけてきた
決心を心で揺るがすわけには行かなかった

俺はやっぱリンのことが好きで
そして、その思いは、きっと変わることがない
情けないけれど
それに気づかせてくれたのは、莉子で
その思いを無駄にしちゃいけない

「懐かしいね・・・」

車両には、
人はまばらで
俺が話す前に、リンが口を開いた

「ん？」

「ほら、イタリアにさ、卒業旅行に行った時・・・」

「あぁ・・あの時も確か乗ったな、真っ赤なTGV」

「ふふ。そう、それで私と翔だけが、電車に乗り遅れた」

「そうそう、そして、みんなと違う反対方向にのってしまったんだよな」

「あははは、そう、懐かしいね」

・・・

・・・

そして、再び黙り込んだ

「リン？寒くないか？」

雨に濡れたまま電車に乗り込んだので
この空調で寒くならないか心配になった

「ん～少し寒いかも」

「ちょっと待って、スーツケースから、タオルとるわ」

そう言って、俺は
誰もいない、通路の隅においてある、スーツケースかから、
タオルをだし、
それをリンに渡した

「とりあえず、拭いとけよ」

「・・ありがとう
てか、タオル持ち歩いてるんだ」

「常識だろ？え？持たない？」

「持つか・・・」

その答えに俺は噴き出す

いつもの変わらないリンとの会話だった

この列車のスピードで、バチバチと余計に雨が打ち付けていた

俺は
ドカッと、またその横に座った

そして、今度は、
そのリンの手を
固く握りしめた

一瞬キュっと力を入れたリン