復讐のレクイエム2東京編 (ページ14)

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使用人過去編6 ページ14

「犯人探しはけっこう今すぐ染み抜きをしなさい経験の浅い執事に任せないでくれ」

「か……かしこまりました旦那様」

そう返事をしながらも、内心ではつい苛立ってしまう。

(こんなもの、零した執事を見付けてやらせないのかよこっちは一刻も早くのえるさまの元に戻らないと、見せ場を取られてしまうかもしれないのに……！)

「……聞いてるかい？」

「は、はい！すぐに洗って参ります！」

　仕方がない。こっそりと他の執事に押しつけて、自分はのえるの元へ戻ろう。

そう考えたのに、こんなときに限って若い執事はみんな姿が見えなかった。

レオは仕方なく、自分で染み抜きをすることにし、のえるの『お願い』を見送る羽目になってしまう。

　そして、のえると話しているときに旦那様から呼び出されることは、それからも度々起きたのだった。

　まるでタイミングを見計らったかのように

「――だから」

　旦那様はにこやかにこう言った。

「明日はのえるに、僕が昔着ていたあのジャケットを着せてやることにした｡僕と出掛けるからね急いでジャケットを準備して、ほつれなどがないか確認して」

(ジャケット ……また、そんなくだらないことで『急いで』なんて言い始めて……)

　苛々する。

「ではよろしく頼んだよ」

「……」

　こうしているあいだにも、そのうち新しい主君となるのえるがレオを待っている。

なのに自分は、もうじきなんの関係もなくなる男の前で、一体何をしているのだろう。

「レオ」

「……はあ……」

　思わず、溜め息が漏れてしまった。

「……そう騒がなくとも、そんなジャケットどうしても明日じゃなくちゃいけないわけではないでしょうに……」

「…………」

「！」

　その瞬間。

自分が口にしたことに気がついて、レオはばっと口を抑えた。

「な、……」

旦那様の顔が真信じられないというように見開かれる。レオ左右に首を横に振り、先ほどの発言を誤魔化そうとした。

「ちが……っ！！違うのです旦那さま、いまのはその、そんなつもりじゃ……」

「失望したぞ」

「申し訳ございません旦那様お許しを……！どうか、この通りですから……！！」

「…部屋から出ていきなさい」

レオは慌てて旦那様の部屋を飛び出す。自分に必死に言い聞かせながら階段を駆け下りた。