復讐のレクイエム2東京編 (ページ13)

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使用人過去編5 ページ13

レオは、のえるへの奉仕にいっそう力を入れるようになった。

これまでより一時間早く執事たちを叩き起こし、朝食の準備をさせる。

湯を沸かし、のえるの身支度をすぐに手伝えるように命じておく。

のえるの好みをすべて聞き出し、料理人にはのえるの好きな料理を作らせて、食事のあとは気に入りの紅茶を。

のえるの制服をそれは美しく着付けて、のえるのためにとっておきの菓子を焼く。

これまで、日中は旦那様の世話につきっきりだったレオの日々は、あの日を境にがらりと変わった。

「レオー今日ねぇ～東京の新作いちごラテが飲みたいなぁ！」

今日もまた、レオを頼る声がする。
　
「はい。直ぐに買ってきます」

「わぁ！それじゃ僕の部屋で一緒にのもぉ！あっ、ケーキも忘れちゃダメだよ」

「かしこまりました」

「それからねぇ、レオにもうひとつお願いがあるの！」

そんなのえるの言葉を遮るように、屋敷の奥から旦那さまの声が響いた。

「レオ！レオ、どこにいるんだ！早く来てくれ！」

「おっと、旦那様がお呼びだ」

のえるは肩を落とし、レオを見上げる。

「パパが呼んでるから行きなよレオ」

「のえるさま……申し訳ございません、すぐに戻りますので」

「うーん」

のえるは寂しそうな笑みを浮かべたあと、こんな風に言った。

「レオが遅かったらリゼルに頼む！」

「！！」

その瞬間、レオの中に焦りが現れた

「それには及びません、旦那さまのお言いつけをすぐに果たして戻りますので。どうぞお待ちください」

他の執事たちに、のえるへの見せ場を与えてなるものか。

(あの小僧たちが、のえるさまのお心を満足させる仕事が出来るはずもない。)

レオは急いで旦那さまの元に向かい、用事を聞いた。しかし、旦那様の言いつけはこんなときに限って、時間を掛けた丁寧な仕事が要求されるものだ。

「書類に紅茶のようなものが着いている一体誰がこんな粗相をしたんだ」

「も、申し訳ございません旦那さま！！お、恐らくは、執事のうちの誰かかと……」

「ほぅ執事が零した挙げ句、すぐに報告もせず放っておいたということか」

にっこりと笑っているが目が笑っていない

レオは必死に頭を下げた
　
実は、この部屋で最後に紅茶を入れたのはレオだ。昨日の夜のえるにせがまれてそうした。
　
書類に出来たその染みは、確かに昨日淹れた紅茶と同じ色合いのものだ。レオはそんな失敗を犯してはいないので、黙っておく。

　