くじら一家の末っ子くん part2 (ページ20)

今日:33 hit、昨日:34 hit、合計:212,480 hit

くじらが66匹ページ20

「こ、こうか…？」
『そうそう！ポートガス上手いじゃん！』

今俺はAに洗濯を教わっている
Aはティーチと違い仕事をしっかりと教えてくる
それは、こう…上からじゃなくて、本当に純粋な言葉で…なんだかむず痒い

『俺なんて、最初教えて貰ったけど全然わからなくてさ、何度も教えて貰ったもん』
「へぇ…」

洗濯の干し方は本当に丁寧で、ダダン達なんかは乾けばいい、って感じだったがAの干し方は…マキノさんみたいな綺麗なやり方だった
雑なやつらが多い(偏見だが)海賊がこんなやり方を誰に習ったんだろうか、そう思って聞いてみた

誰に習ったんだ？と

Aは笑った
ふんわりと柔らかい笑みだ
横からみているが、優しい顔をしているのが一目でわかる
青と緑が綺麗に混ざった長めの髪が風に舞うので表情もあいまって一瞬女に見えてしまった

『母さん』

サッチがいっていた、３つの時に亡くなったというAの母親

『母さんはこの船の洗濯とか…そういうのをやっててさ
だから、俺のやり方は全部母さんから教わったの』

教わったっていうか、見てただけなんだけどね。と懐かしむように笑う

『ポートガスは？』
「え？」
『ポートガスは家族いる？』

突然の質問に、顔もわからないお袋と胸の奥底にいて自分を蝕む原因が浮かぶ

「…っ、」

思わず握りしめた洗濯物はシワが深く刻まれた

「…弟が、いる」
『弟？』
「……ああ。血の繋がりはねぇが……」
『…そっかぁ。ねぇ、弟さんてどんな人？』
「…騒がしいやつだ。おまえの２つ上だが、おまえの方が年上に見える」

あはは、そうなんだね、と話を聞いてるだけなのに楽しそうだ

『ポートガスはその弟大好きなんだねぇ』

大好き

その五文字にも満たないワードが衝撃だった
確かに寂しく感じることはあったが、大好きと表現されるのはむず痒い。
いや、嫌いなわけではないのだが

なんて端から見れば苦しい言い訳
それをまた楽しそうに聞いている

『さてと、洗濯終わり！』

からになった洗濯かごを持って船室に戻ろうとするAはくるりとこっちを向いた

『大好きな弟くんのはなし、また聞かせてね

エース』

じゃ！と消えてくA
ポートガスからエース、と呼び方が変わったことに気づくのはここから数秒後だった