夢、馴染む。 ページ5
「びっぐひっと……」
それがどこなのか、なぜ行くのか、分からないことが増えただけだが、確実に道は拓けた。
ああ、心中なんとも穏やか。
目標があるってこんなに人を安心させるんだな。
店員からおつりを受け取り、礼を述べてなるべく柔らかく笑った。
男だったが分かりやすく赤くなった顔を見て、大丈夫だ、と心の中で呟いた。
「ふざけるなよまじで……!!」
かれこれ何分何十分歩いたことか。
数十メートルもない間隔で人に道を聞き、ナビゲーションアプリの操作方法を教えてもらい、「もうここまっすぐ行くだけですから」と言わせるまでに付き添ってもらったというのに……
なぜか一向に着かず、バス停のベンチでダウン。
もう疲労と自分への失望に閉口せざるを得ない。
……ああ、これはもうだめだ。死ぬ。
人生まさに今からってときに……いや本当に……現俺の人生始まって一日もたってないのに……
まさか死期がこんなに早く……
目が閉じる。
今更になって一本早めた電車のことが思い出された。もっと寝ておけば……
死ぬんなら、せめてふと
「あの、大丈夫ですか?」
「………………はい」
冷めた。
すっかり受け入れ体勢に入ってたけど、一気に。
いや若者、君は悪くない。ありがとうこんなバス停で死のうとしてる奴助けてくれて。
「あの、」
「え?あ、いや、あー……顔色悪いから、ほんとに大丈夫かなって。……あっ、すんません、お節介ですよね。すみません……」
しばらくぼーっと俺の顔を眺めていた彼。
しかし途端に饒舌になり、今の顔色はたぶん俺よりも悪い。
しどろもどろで目も合わない。
「いえ、一つお聞きしたいことがあって」
「え、はい……」
「ビッグヒットエンターテイメントまでの道を教えていただきたいんです」
「あ……俺もそこに向かってるんです。よければ、……い、いっしょに、」
「お〜本当ですか!?是非お願いします!」
「え、あ、」
「あ、僕、本当に迷いやすいんで、ご迷惑おかけするかと思いますけど……」
「いえ、そんな」
「あの、Aさん」
「えっと、できれば俺の横か後ろに……」
「その路地Aさんでも入るの難しいですよね?」
「握るなら手と裾どっちがいいですか」
「俺今事務所ん中入りましたよね!?なんで素通りしたんすか!?」
「あー着いた〜。ありがとうねーユンギくん」
「Aヒョン出かけるときは絶対俺に一声かけてください。死にますよ」
「えっ」
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mask(プロフ) - いいえ、こちらこそすみませんでした。ご丁寧な返事ありがとうございました。次の更新を楽しみにしてます! (2018年5月31日 22時) (レス) id: b5f8d2284e (このIDを非表示/違反報告)
しゃおとぅん(プロフ) - maskさん» それでも分かりづらい時はお手数おかけしますがもう一度コメントしていただけると嬉しいです。そこでまた考えようと思います。ご要望に沿えず申し訳ありません。 (2018年5月27日 10時) (レス) id: fd1bf708ad (このIDを非表示/違反報告)
しゃおとぅん(プロフ) - maskさん» コメント、応援ありがとうございます!名前表記の件ですが、今のところはまだ要検討ということでお願いします。これから日常パートでメンバー同士の会話も増やしていこうと考えていて、なるべく描写や口調で見分けられるようしていくつもりです。 (2018年5月27日 10時) (レス) id: fd1bf708ad (このIDを非表示/違反報告)
mask(プロフ) - 誰がどのセリフを言ってるのかあまりわからなかったので、「」の前に喋っている名前を付けていただけると嬉しいです…!それとは別に、自分が何者かいまいち謎なまま進んでいく物語というのが新鮮で、すごく面白いです!頑張って下さい! (2018年5月26日 18時) (レス) id: b5f8d2284e (このIDを非表示/違反報告)
しゃおとぅん(プロフ) - ツバキさん» コメント、アドバイスありがとうございます!次の更新で取り入れようと思います! (2018年5月4日 12時) (レス) id: fd1bf708ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃおとぅん | 作成日時:2018年4月22日 6時