ジェネレーションギャップに死す

夢、怖い。 ページ3

一旦個室に籠り、ぎこちない深呼吸をする。

何度繰り返したのか、胸の動悸がましになってきた。


また鏡を見るのが怖くてしかたない。
それでも、状況の把握に努めないと。


考えてみれば簡単な話だ。
サラリーマンのおっさんが、電車で転んだ拍子に誰かと入れ替わった。

次にすべきは、その"誰か"について。


鞄の中身を取り出していき、棚のようなところに並べていく。

見た限りでは特に危ない物はなさそうだ。
スマホ、財布、イヤホン、飲みかけの飲料水……
最近の子にしては少ない気がする。よく分からないけれども……

身分証明書のようなものは……
持っているなら財布の中。あーでも、それはなぁ……



「……ごめん、少年」

しばし考えた後、一言断って財布を開いた。

中には紙幣と硬貨が数枚、カード類に埋もれて保険証を見つけた。


恐る恐る、見る。
ごめん少年。



氏名 カン・A
生年月日 1990年7月7日
性別 男



「……んんんん〜〜〜？」


うん。うん、……うん？


結論、怖い。

えっ怖い怖い怖い怖い。おっさんの灰色の脳細胞が全力で叫んでる。めっちゃ怖い。


「は？ いや、同姓同名…………てか1990!? 俺中堅だぞそのとき！ ……あ、でも、誕生日も、同じ……」


結論、すごく怖い。

この相違点と共通点の落差はなんなんだ？




ほんとに何までごめん少年。ちょっとスマホも見る。

……少年、おっさん暗算苦手だから君の年齢とかまだ分かってないけど、20代そこらの若者はパスワードみたいなのかけておいた方がいいんじゃないかな。助かったけど。


スマホにプロフィールとかの機能があるのかは分からないし、そこにたどり着ける気もしないので、一番最初に出てきた画面にあったトークアプリを押した。

家族のグループらしきところを開く。
父、母、弟。
主要な家族構成はこの三人か。俺もだ。

あ、すみませんご家族のみなさん。


次に電話帳。
フルネームのあとに(父)といったようにカッコをくっつけられた名前もこれまた一字と違わず我が家と同じ。
もうむしろこの恐怖にも慣れてきてしまった。
……カッコなくても分かってあげろよ。


うーんと唸り、もう一度保険証を手にとる。
あ、住所を見るの忘れてたな、と目の高さまで引き上げた。


……おお、小さい字がよく見える。

えーっと、韓国……

……京畿道？ ………………



え、待て

まさか住所も同じ？


……うん。やっぱりまだ慣れてなかった。怖すぎる。

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