悪い噂 Ⅱ (ページ47)

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「ふは、来るの早いよ」

「お前が連絡くれたんだろ」

「そうだけど、もうちょっと俺の彼女でいてほしかったなって」

「もう無理だよ、勘弁して」

「必死だな、あの爆モテじゅったんが」

「うるせぇな。好きな女を自分のモノにできてないんだから爆モテが聞いて呆れるだろ」

「ま、そうかもね」

北斗と樹くんが話してる
それは分かるけど、樹くんに抱きしめられてドキドキしてる私はなにも考えられなかった

北斗より細くて、甘くて、擽ったい
私の心がザワつく感覚が懐かしい

「A、」

『ほく？』

「別れよっか」

『え？』

そっと、樹くんが離れる
トン、と後ろから押されて北斗の目の前に行くと
高い背を屈めて私と目を合わせる

「大好きだったよ」

ぶわっと涙が溢れた
悲しいと申し訳ないが混ざった、そんな涙

「泣かないでよ、俺はもうその涙拭えないから」

『な、んで』

「貴方の涙、拭ってくれる人は後ろにいるでしょ？」

『ほく、と』

「幸せだったよ、ありがとう」

最後に頭を撫で、にこっと微笑む

「樹、あとはよろしくな」

って、そう言って立ち去った

私の目からは涙が溢れて止まらなくて
止めたくても、どうしても止められない

ずっと側で守ってくれた
泣きたい時は抱きしめて、涙を拭って、慰めてくれた

たくさん幸せにしてくれたのに、私は北斗を幸せにできなかった

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「Aちゃん、」

『樹くん』

「もう、泣かないで」

細いその指で、苦しそうな顔して、涙を拭う
よく見ると樹くんは前よりも随分細くなっていた

『樹くんも、泣かないで』

「え？」

『泣きそう、もう少しで』

そう言うと、ふはって笑われた

「ねぇ、まだ俺のこと好きでいてくれてる？
北斗より、幸せにする。絶対にもう泣かせない」

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「だから、俺と付き合ってよ」