悪い噂 Ⅱ (ページ45)

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「北斗、ごめん。でも、Aをもう樹に返してあげて」

なんて言う舞花は悪魔だ。
私は元々樹くんのものではないし、そんなことを北斗に言うなんて、残酷すぎる。

『舞花、』

「お願いだよ、もうあんな樹見てられない。樹にはAが必要なんだよ、苦しいけど、悔しいけど、私じゃ駄目なんだよ」

そんなわけないじゃない。
樹くんは舞花が好きで、泣くほど好きで、私では満たすことができないって、そうでしょう？

「舞花」

「北斗、ごめん。ごめん、だけど」

「分かってるよ、分かってる」

俺こそごめんな、って。
北斗が謝ることなんてなにもないでしょ？

「あとは俺から言うから。舞花は帰りな。1人で帰れる？」

「ん。大丈夫。ごめん」

「うん、じゃあまた今度」

「うん、Aも、またね」

『あ、うん』

なにがなんだか分からなかった。
けど、嫌な予感だけは感じた。

「出よっか、帰ろ」

だって北斗が、諦めたような顔して笑うから。