悪い噂 Ⅱ (ページ44)

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翌日、休日。
約束通り北斗と映画に行く。

準備が終わって、のんびりしているとチャイムが鳴る。
時計を見ると10:00で、北斗だなって思ってドアを開ける。

「おはよ」

『おはよ、北斗』

「準備終わってた？」

『うん、ばっちり』

「今日もお洒落だな」

『何度も言うけど、北斗もね』

んじゃ行こっか、そう言ってサラッと手を繋ぐ。
恋人繋ぎ、北斗の男らしいその手がとても好きだ。

公開して割と経っていた映画だから、空いていて、2人で話し合って1番後ろの真ん中の席に座った。
ポップコーンは2人で1つ。飲み物も頼んで、始まるまでお喋りをする。

始まったら静かになって、でも、サッと手を繋いでくるから、きゅんとする。
時々耳元に口を寄せて笑いあって、幸せだなって北斗といるとよく感じる。

この幸せを手離したくないって、そう思っているのに。

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「A、」

って、映画を終えてカフェでゆっくりしていると舞花が来た。今日も可愛らしい格好で、樹くんのところに行くのかな？って勝手にそう思ってしまった。

『舞花？どうしたの？』

「珍しいね、1人なんて」

北斗も不思議そう。
いつも誰かといるから、舞花は友達に囲まれている姿しか見たことがないから、そう思ってしまう。

「助けて、」

『え？』

「樹を、助けてあげて」

ポロッと一筋の涙。
私はこんな綺麗に泣けないな、なんて思う。
舞花の言葉は頭に入ってこない。

いや、拒否、している。
樹くんのことは聞きたくない。
私は北斗を裏切りたくないから。

でも、

「お願い、Aっ」

って泣きながら抱きしめられたら、嫌でも樹くんの顔が頭に浮かぶでしょ？