悪い噂 Ⅱ (ページ38)

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落ち着いた私の頭を撫でて「頑張ったね」って。

樹くんと終わらせるって予め伝えておいたから、心配で様子を見に来てくれたらしい北斗は、勝手なことをしてごめんって謝ってくれたけど、助けられたから文句なんて1つもなかった。

「それで、さ。樹とは...」

『ちゃんと伝えたよ、北斗と付き合ってるって』

「そっか」

ほっとした北斗はくしゃっと笑った。
大好きだった樹くんの笑顔のように。

『幸せになりなよってって最後に伝えてくれたんだ』

「ん、そっか。安心してよ、幸せにしてあげるから」

そう言う北斗は本当に幸せにしてくれるだろう。
今まで彼に傷つけられたことなんてないんだから。
ずっとずっとヒーローみたいに助けてくれた北斗なんだから心配する要素なんて1つもないのに、私は我儘で最低だから物足りないと感じてしまう。

樹くんを好きだった頃のように、ハラハラして嫉妬して、なんて感情が湧き上がってこないことが違和感で、相当樹くんに毒されてるな、なんて笑えてくる。

「A？」

『ん？』

「もし今、樹に好きだって言われたらどうする？」

『へ？』

「ごめん、なんでもない」

きっと、彼は不安なんだろう。
そんなの恋愛経験の少ない馬鹿な私でも分かった。
今まで不安にさせた分、安心してほしい。
私なりに、貴方を大切にするって。

『北斗』

「ん？」

『私は北斗が好きだよ』

そう告げると

「ふは、ありがとう。俺も好き」

ってくしゃっと笑う。
そのあとにふわっと微笑んで抱きしめてくれる。
そんな北斗を傷つけることはしたくない。