悪い噂 Ⅱ (ページ36)

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樹くんの前に舞花に伝えたことには意味があった。
きっと、私が本当のことを告げると樹くんは怒るから。
そんな樹くんを受け止めて、包み込んでくれるのは舞花だけ。だから、私が樹くんを抱きしめる前に舞花が樹くんを抱きしめてほしかった。

『樹くん、』

「ねえ、ちゃんと話そう」

久しぶりに見た樹くんは以前よりも痩せた気がする。
その原因が私なことも、薄々勘づいていた。

俺の家行こ、って言われたけど2人っきりになりたくなくて、ファミレスがいいって告げると、力なく笑われた。

「っは、そんな2人になりたくないんだな」

『ごめ、』

「いいよ、別に」

行こ、って手を繋がれそうになったから思わず引っ込めると「俺、嫌われてんね」って。

そうじゃ、ない。
そうじゃないけど、否定することが傷つけることにもなるって思うとどうすればいいのか分からなかった。

どうすれば、できるだけ樹くんを傷つけずに関係を終わらせることが出来るのか、恋愛経験の少ない私には全く分からなくて、悔しい。

ごめんね、こんな不器用な私で。