悪い噂 Ⅱ (ページ35)

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「え？」

『樹くんの側にいてあげて』

「どういうこと？」

『私、北斗と付き合うことにしたの』

そう言うと舞花は口元に手を当てて、驚いた。

「なんで？」

『え？』

「樹のこと、好きだったんじゃないの？」

なんて聞く舞花が今は悪魔のように見えた。

『好き、だったよ』

「じゃあ、なんで...」

『私ね、舞花が思ってるより強くないんだよ』

あの日、舞花に私は強いと言われた。
でも、そんなことないんだ。
気丈に振舞っているだけで、本当はボロボロになっていた。そのことに、北斗だけは気づいてくれたんだ。

『樹くんのこと、好きでいるの疲れちゃったの』

「そっ、か」

『うん。でも、仕方なく北斗と付き合ってる訳じゃないんだよ。ちゃんと、北斗のこと大切だって思ってる。我儘だって分かってるけど、私は樹くんの隣で笑っているのは舞花がいいから、だから、お願い』

半分、嘘で
半分、本当

『樹くんの側にいてよ』

本当は樹くんの隣で笑っていたかった
でも、北斗のことは大切なんだ

どちらもなんて無理だから
私は私を大切にしてくれる北斗を選んだ