悪い噂 Ⅱ (ページ27)

今日:153 hit、昨日:95 hit、合計:207,815 hit

77 ページ27

・

今日はお昼までの講義なことはバレていて、講義が終わると教室まで樹くんが迎えに来た。

そんなことしなくても勝手に帰ったりしないのに。

無言で歩いていると見慣れた道。
あー、樹くんの家に行くんだなーってそんなことを思いながら彼の細いけどしっかりとした身体をぼーっと眺めていた。

「どーぞ」

『おじゃまします』

「ごめん、散らかってんね」

『んーん。大丈夫だよ』

ことん、と目の前に麦茶を出してくれて目の前に樹くんが座る。

樹くんとこんな空気になるのは初めてだった。

「あ、のさ。朝のだけど...」

『ごめんね。酷いこと言っちゃって』

「いや、そんなこと、！」

『ううん。私が悪いの。だから樹くんはなにも気にしないで。ね？』

早く、この場から居なくなりたかった。

北斗に ‘‘ 助けて ’’ って縋り付きたくなった。

「Aちゃん、」

『あ！ごめん！用事思い出した！帰るね！』

その言葉の続きを聞きたくなくて立ち上がる。
お願いだから、帰らせて。

北斗のところに逃げたいの。

玄関まで行き、鍵を開けようと手を伸ばすとその手を上から包み込まれた。

「用事って、北斗？」

『ぇ、』

喉から出た言葉はみっともないほど小さかった。