悪い噂 Ⅱ (ページ11)

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きっとコンビニにでも行こうとしていたんだろう、スマホと財布だけを持ってスウェット姿。

ふと私と北斗の握られている手を見ると眉間に皺を寄せてぐいっと私を引き寄せる。
気づけば私は樹くんの腕の中で、北斗の手の温もりがなくなっている。

「樹、」

「北斗、この子俺のだから駄目だよ」

ほら、そんなこと言われたら全部の気持ちが樹くんに向いてしまう。

「Aはお前のもんじゃないでしょうよ」

「俺のこと好きなんだから俺のだべ」

「それは自分勝手すぎるんじゃない？Aが樹のなら、樹だってAのもんになるのが筋だろ」

って、そうだよ。それが当たり前のことなんだ。
私が樹くんのものなら、樹くんも私のもの。
でも、私たちの間ではそんなことが起こるなんて夢のまた夢の話。

北斗の発言に言葉を詰まらせる樹くん。
そりゃあそうだ、樹くんにとって私はそういう対象じゃないんだからそんなこと言われても困るよね。

『樹く、』

「それでも」

『え？』

「それでも、Aちゃんは俺のだよ。だから北斗」

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「俺からAちゃんを取らないで」