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Aは鬱の手を取り談話室から飛び出した。訳のわかっていない鬱に説明もなしに歩き続ける。そしてAの自室まで彼を連れてくるとその手を放す。
「ねえ、兄さん。ずっと何かがおかしいと思ってたの。兄さんだけじゃない…グルッペンも、ゾムも」
いつも自信に満ち溢れている彼女は、途方にくれて今や歳相当に見える。妹の不安な顔を見たのは久々で、鬱は懐かしい気持ちになった。
「せやね…」
「教えて。私だけ知らないなんて嫌よ。」
鬱は失礼、と断るとAの部屋なのにも関わらず煙草を吸い始めた。Aはそんな彼を黙って見つめている。
「むかーしな、まだ俺らがβ国におった頃…俺とグルちゃんとA…そしてゾムは一緒によう遊んでたんよ。」
─
──
───
β国の貴族シャルル家に生まれたAは貴族の娘にしては活発的であり自由奔放な少女であった。立派なレディとしての習い事より外で遊び回る方が好きな少女。
Aはある日、一人散歩をしていると屋敷から抜け出す道を見つけた。屋敷の外から出ては行けないよと両親に言われてはいたものの、外へ行ったことのないAは好奇心の赴くままに足を進める。
自分の屋敷と同じぐらい大きくて煌びやかな屋敷がずらりと並ぶ。
どんどん進めば、ガラリと雰囲気が変わり鮮やかな青果や肉、野菜達が売られ活発な雰囲気の街に変わった。同じ国でもここまで景色が違ってくるなんて！とAは興奮を抑えきれずに探険を楽しんでいた。
そして、ひらけた道に出た。そこは屋敷も商店も何もなく…低くボロボロな家がポツポツと並び、歩く人々はみんな痩せ干せていた。なにより匂いがAが嗅いできたどんなものより臭かった。街の景色がガラリと変わったことにAは驚きが隠せず、すぐに元へ戻ろうとした。しかし、それは右手に感じた生温い温度により阻まれる。
「やあ、お嬢様。こんな貧困街に貴族の君が何の用事かなぁ？」
腐敗の匂いと、黄ばんだ歯。髪の毛は伸び放題で、着ている服は辛うじて大事なところだけを隠している。Aの身長の二倍はある大柄な男が、Aの右手を掴んでいたのだ。恐怖によりAは小さく悲鳴を上げる。
「おやおや、怖がったらあかんでぇ。それにしてもお嬢様は本当に高そうな服きてるねぇ。首にかけてるネックレスも、腕輪、髪の毛も、……瞳も、ぜーんぶ高く売れそうだねぇ。」
男は見開いた目に異様な光を宿して、Aの首を掴んできた。
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鳩山(プロフ) - ろわ。さん» コメントありがとうございます…！拙い文章でしたが楽しんでもらえたなら幸いです。嬉しいお言葉本当にありがとうございます…！ (2019年11月27日 21時) (
レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ろわ。(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後の結婚式のシーンでは私までut先生みたいになりました...。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2019年11月22日 2時) (レス) id: a9da82584b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ロアさん» ロアさん！コメントありがとうございます！労いのお言葉まで…！最後まで読んでくださって本当にありがとうございました！ (2019年11月21日 13時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ロア(プロフ) - 完結おめでとうございます！！( ；∀；)お疲れさまでした (2019年11月21日 8時) (レス) id: 148e7f1d83 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ウルさん» コメントありがとうございます！とても嬉しいお言葉、そして完結まで読んでいただき本当にありがとうございました！ (2019年11月21日 6時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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