＊ゲッケイジュ ページ30
「何か意外ね。ひとらんらんさんのような人が軍人だなんて」
「軍人じゃなくて農耕民族じゃんってよく言われるよ」
「ふふっ、そっちの方がお似合いよ」
「俺からすると君みたいなお嬢様がこんな男臭い基地にいる方が意外だけどね。」
「色々あったのよ」
「…大ちゃんから話は聞いたよ。君は立派だ。」
ひとらんらんの声は嘘偽りなかった。
「立派？」
Aはこんなに真っ直ぐ褒められた試しがないため少し照れて聞き返してしまった。ひとらんらんは悪い顔せず頷く。
「あぁ。故郷を救ったんだろう。誰にでも出来ることじゃない。」
ひとらんらんは屈んだ姿勢から立ち上がり背筋を正す。今まであまり気づかなかったが、横に並んだ彼はAの頭ひとつ分背が高い。
「君はすごいよ。何も出来なかった無力な俺とは大違いだ。」
「そこまで褒められたものではないのよ。私には何で貴族を恨んでいたか…β国を救いたかったか、理由は分からないの。でも、あの日医務室で目を覚まして結果を聞いた時…涙が出てきたの。不思議でしょう？」
「分からないってどうしてか聞いてもいい？」
「ええ。私は、どうやら重要な記憶を失ってるみたいなの。自分の使命として心にβ国を滅ぼすしかなかったから」
ひとらんらんは無言で何やら考えている様子であった。そして、ゆっくりと話し出す。
「…記憶のない君にヒントになるかは分からないけど、一つ話をしてあげる。」
「ぜひ、お願いするわ。」
「それはね、昔…農民だった男の話。彼は生まれた頃から自然に囲まれていたんだ。自然に愛され自然を愛する男。家族や友人、恋人と幸せに暮らしていた。けれどそれも長くは続かなかったんだ。そこは紛争の地となった。愚かな国のせいで罪のない農民はみんな死んだ。自然も炎に包まれた。美しかった景色はどこにもなかった。……だから男は、たった一つの目的を果たす為破滅の道を突き進んだ」
「男の目的って…？」
「"復讐"」
「復讐…」
「愚かな国の、一部の人間達が犠牲をなんとも思わず平和に…優雅に、暮らすことが許せなかった。」
「！」
「結局その男は復讐に失敗して死ぬんだ。…本当に愚かな男だよね」
ひとらんらんはどこか悲しげに笑った。Aはひとらんらんの話が他人事とは思えない。
「男が国を滅ぼす理由は復讐のため、ね。」
「大切なものや誇りを守ろうとする時…人はとんでもない力を発揮するものだよ。君はきっとそれが出来る人だ。」
その姿は紛れもない軍人であった。
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鳩山(プロフ) - ろわ。さん» コメントありがとうございます…！拙い文章でしたが楽しんでもらえたなら幸いです。嬉しいお言葉本当にありがとうございます…！ (2019年11月27日 21時) (
レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ろわ。(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後の結婚式のシーンでは私までut先生みたいになりました...。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2019年11月22日 2時) (レス) id: a9da82584b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ロアさん» ロアさん！コメントありがとうございます！労いのお言葉まで…！最後まで読んでくださって本当にありがとうございました！ (2019年11月21日 13時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ロア(プロフ) - 完結おめでとうございます！！( ；∀；)お疲れさまでした (2019年11月21日 8時) (レス) id: 148e7f1d83 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ウルさん» コメントありがとうございます！とても嬉しいお言葉、そして完結まで読んでいただき本当にありがとうございました！ (2019年11月21日 6時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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