*ライラック ページ27
自室で一人、天井を見つめた。グルッペンの言ったことが頭をグルグル駆け巡る。…もう寝よう、とあの日のことを思い出しながらAは目を閉じる。
Aは自分の兄である鬱とその友人であるグルッペンといつも三人で遊んでいた。
シャルル家とグルッペンの家柄は共に侯爵であり、王族を除けば階級は上位の貴族であった。そのため生まれながらに歳の近かったAとグルッペンは婚約者と決めれていた。
深い眠りから目覚めたある日。突然兄である鬱から
「僕、グルちゃんと家を出て行くわ」
と衝撃の発言をされた。
「兄様、それは一体…?」
「そのままの意味や。僕はこの国の汚さを知ったんや。Aも×××の件でよう分かったやろ?」
「…何を言って、?」
「!! お前、記憶忘れたんか!!」
あの日、随分と鬱から怒られた覚えがある。しかし何故自分が怒られているのか見覚えはなかった。ヒートアップする鬱にさすがのAもカチンと頭にくる。
「何、言ってるの!ダメに決まってるじゃない!外は危険なだけよ…!まだ子供の兄様達が生きていける訳ない!」
「だからってこのまま、自由を奪われるのは嫌なんや…!」
鬱が妹に対してここまで声を荒げたのはきっと最初で最後なのだろう。Aはその怒号に涙が出てきた。扉に向かい歩み出した鬱に、置いていかないでと必死に腕を引っ張った。やだ、やだと泣きじゃくるAと声を荒げて彼女を引きずる鬱を止めたのは、いつの間にかその場に姿を現したグルッペンであった。
「ウツー、嫌がっているだろう。やめてやれ」
「でも…グルちゃん。こいつが引き留めるんよ」
「…Aもええ加減泣きやめ。な?」
今よりも声の高いグルッペンが優しくAに語りかけた。Aは鬱の手を振り払うとグルッペンに抱きついた。
「グルちゃん…、兄様がここから出て行くなんて言うの。グルちゃんは違うよね?出て行かないで私と結婚するんだよね?」
グルッペンは泣きじゃくるAをそっと抱きしめて背中をゆっくりと撫でていく。彼女の呼吸が落ち着いたのを見計らい、話し出す。
「ごめんな。俺もウツーと一緒に出て行く」
「な、んで…?」
「友と約束したからだ。」
「友達?」
「あぁ。俺はこの国のあり方が許せない。お前もそうだろう?」
その言葉は否定するより先に、Aの胸にストンと収まった。
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鳩山(プロフ) - ろわ。さん» コメントありがとうございます…!拙い文章でしたが楽しんでもらえたなら幸いです。嬉しいお言葉本当にありがとうございます…! (2019年11月27日 21時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ろわ。(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後の結婚式のシーンでは私までut先生みたいになりました...。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2019年11月22日 2時) (レス) id: a9da82584b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ロアさん» ロアさん!コメントありがとうございます!労いのお言葉まで…!最後まで読んでくださって本当にありがとうございました! (2019年11月21日 13時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ロア(プロフ) - 完結おめでとうございます!!( ;∀;)お疲れさまでした (2019年11月21日 8時) (レス) id: 148e7f1d83 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ウルさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいお言葉、そして完結まで読んでいただき本当にありがとうございました! (2019年11月21日 6時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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