【d!】藍色の花嫁【zm】

＊サンビタリア ページ12

月日は流れ、ついに結婚式当日。殿下の結婚式ということもありβ国民は本日が祝日となっている。
天気は憎いくらいの快晴。
本日の主役のAは天気とは真逆に憂鬱で、侍女による化粧を施されながら溜息をつく。何も知らない侍女は「マリッジブルーには早いですよ」と呑気に笑う。Aがこのような気分になるのには理由があった。
その理由とは、以前依頼した先のグルッペン・鬱両者から連絡がないということ。
あれだけ念押ししたはずなのに全く音沙汰がないのだ。心配にもなる。

「うわあ、お綺麗ですね」

侍女が頰を染めてAの肩に触れる。

「きっと素敵な一日になりますわ」

侍女の言葉にAは曖昧に笑った。






純白のドレスを見に纏い、赤いカーペットを歩く。隣を一緒に歩くのは貴族特有の肥えた体型をした父親だ。育ててもらった恩はあれど、Aは自分を物としか見ない父親が大嫌いだった。

「あの出来損ないとは違いお前は本当に私の誇りだ。何せ、殿下の心を射止めたのだからな」
「お兄様が出来損ない？」
「当たり前だ。あいつはシャルル家の名に泥を塗った愚か者だぞ。まあ、あいつのことだ。今はどこかで野垂れ死んでるだろう。」
「………」
「ついに、シャルル家から王族が出る。私はこの日を誰よりも楽しみにしていた」

本当の愚か者は誰だ、と言ってやりたい。しかしまだAには父親に逆らう手段を持っていなかった。王宮で行われる結婚式。国中が祝福している。華やかな場所の裏では影があるものだ。この結婚式の費用も重い税金から。悠々と暮らせるのは全ての国民のおかげであるのに感謝もせず、才能ない人間達が牛耳る世界。

少しの段差を姿勢を崩さず登り切れば、そこには手を差し出すロアがいた。その後ろには、ボロボロの服をきた少年少女の姿。彼らは王族の家畜だ。それはこの国では権力を表している。

「とても綺麗だね」

ロアは、国中の娘たちを虜にするであろう笑みでAを見つめる。しかしAはロアなど眼中ではなくその後ろにいる幼いであろう少女や少年が気になった。Aの視線がロアに向いていないことに気づいた父親が組んだ腕を揺らす。そこで意識が戻ったAは「ロア様も」と適当に話を合わせた。

「殿下、どうか娘を頼みます」
「勿論です。世界中の誰よりも彼女を愛すると誓いましょう」

白い手袋をした新郎が、同じく手袋をした新婦の手を取ったその瞬間……β国を象徴する王宮から爆音が鳴り響いた。

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