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「あのさ、A」
「なに？」
「もう慶から聞いてるとは思うんだけど、」
『慶』。
初めて、けいちゃんのことを『慶』と呼んでる人に出会って、最後に愛菜とけいちゃん、2人同時に会った時には愛菜はけいちゃんのことを『小山』と呼んでいたこと。
話される前に、嫌というほど2人の関係性の変化を感じ取ってしまった。
「私、慶と付き合うことになりました」
「おめでとう、愛菜」
「…ありがとう」
泣くな、私。
ここで泣いたら加藤くんだけじゃなくて、愛菜にもけいちゃんにも全部バレちゃう。
苦しい思いをするのは私だけでいい。
「ほんとは私から言いたかったんだけど、慶が「Aには俺が言う」って言って聞かなくて…笑」
「そうだったの？」
「うん。でも、Aには私の口からも伝えたかった」
きっと今、同じタイミングで加藤くんもけいちゃんからこのことを報告されてるんだと思う。
どんな風にけいちゃんが伝えてるのかは分からない。
けど、きっと幸せそうに、嬉しそうに話してるんだろうなって言うのは愛菜の表情を見てて分かる。
「そっか。わざわざありがとね、愛菜」
「んーん。私が伝えたかっただけだから。笑」
ゆっくり歩きながら話をしてた私たち。
今日は久々に寄り道して帰るかー！という愛菜の提案に乗って少しだけ遊んで帰った。
制服で誰かと遊ぶなんて久しぶりで、失恋して苦しかった想いもその遊んでる間だけは忘れることができた。
「A」
「なに？」
「Aもさ、彼氏出来たら私とAと慶とAの彼氏の4人でどっか出かけようよ」
「…そうだね」
愛菜にも、加藤くんとのことは話せてない。
もちろん、それは加藤くんとの関係に後ろめたさを感じてるからとかではない。さっき、けいちゃんに言えなかったのと同じ理由。
明日、会えれば学校で会おうね、という話をしてから駅で別れる。
思わず、愛菜の後ろ姿を見てこう声をかけた。
「愛菜！！けいちゃんに泣かされたら私のとこ来て！！いくらけいちゃんでも許さないから！！」
結構声を張った私を見て笑いを堪えきれない愛菜。
口を押さえながら肩を震わせている。
「分かった！その時は励ましてよ！！」
「分かってる！」
お互い大きく手を振る。
愛菜の姿が見えなくなってからふっと力が抜ける。
もちろん、愛菜に言ったことは本気だけど、愛菜の前でいつも通り話せていたと思ってなんだか安心した。
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作者名：にゅすの さくら | 作成日時：2022年7月11日 12時
