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「んじゃあ戻るか。そろそろ昼休みも終わるし」
「そうだね」
お弁当箱を巾着に入れてしっかり紐を結んでから立ち上がる。
あ、携帯忘れそうだった。危ない危ない。
そう思って携帯を片手に持ったら加藤くんが思い出したように私の方を向く。
「あ！LINE、聞いていい？」
「あれ？知らなかったっけ」
「うん、多分。これまで必要としなかったし」
「…たしかにね笑」
一応、と思って友達の欄をスクロールするけど加藤くんらしき人は見つからなくて。
そのことを伝えると「じゃあ交換しよ」と言ってQRコードを差し出してくれた。
それを読み取るとアイコンが出てきたから、追加を押して、一応と思って『よろしくお願いします』とよく使うスタンプを送った。
「ふはっ笑 このスタンプ、人気なの？笑」
「わかんないけどけいちゃんが使ってて可愛かったから」
「……ねぇ、しばらく俺と2人の時に小山さんの名前出すのなしね」
「え、」
「一応、"彼氏"だから嫌じゃん」
『彼氏だから』って言われたことが少し嬉しく感じたけど、それだけ加藤くんとの会話でけいちゃんの名前を出してたことに対してなんだか申し訳なくなった。
「…そうだよね、ごめん」
「……こっちこそごめん。謝らせる気はなかった」
思わず顔を伏せた私を見て、いつもより落ち着いたトーンでそう言ってくれる加藤くん。
加藤くんの優しさをふと感じる。
顔を上げると加藤くんと目が合って、私に優しい笑顔を向けてくれて、「教室戻ろっか」と言った。
それに頷いて歩き出そうとしたら「あっ！待って！」と言われる。
「A、ちょっと動かないで」
「え？なんで？」
「いいから」
訳が分からずとりあえずその場に立ち止まっていると加藤くんの手が私の肩に触れた。
びっくりして加藤くんの方を見そうになったけど動かないでと言われてるから動かずにじっとする。
「……あ、これ葉っぱか」
「葉っぱ？」
「うん。肩に虫乗ってるって思ったんだけど葉っぱだったみたい」
ほら、と言って少し茶色かがった葉っぱを見せてくれた加藤くん。
たしかに遠くから見たら虫に見えなくもない…かもしれない笑。
今度こそ教室に戻るために屋上から出る。
屋上に行った時と同じような距離で歩いてるはずなのに、さっきより今の方が加藤くんとの距離が近いって感じるのは、きっと加藤くんと私の関係が変わったからだと思う。
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作者名：にゅすの さくら | 作成日時：2022年7月11日 12時
