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「毎年家族で行ってた所だから、結構案内出来ると思う」
「そうなんだ、楽しみだな」
「それに、見頃よりは少し早いから人もそんなにいないんじゃないかな」
加藤くんの腕と、わたしの腕がたまにぶつかる。
加藤くんは左利きって言ってて、左手で携帯を持ってる。
わたしは加藤くんの右側に座って、右手で携帯を持ってる。
逆で座れば当たることもないんじゃ？って気づいたのはほんとに今の話。今度からは気をつけよう、と思う。
加藤くんは腕が当たってることに気づいてないみたいだった。
「あ、降りるの次の駅？」
「そう。駅降りてから少し歩くけどね」
あっという間に駅について自動改札を通る。
飲み物だけ先に買わせてもらってから、加藤くんの案内で歩く。
10分くらい歩いたら看板が見えて、ここだよ、と言われる。
「…人、多いね」
「うん、見頃より早めだから人少ないと思ったんだけど、」
電車を降りた時は気づかなかったけど思ってた以上に人が多くて、迷子にならないようにしなきゃなぁと思いながら小さい頃こういう所で迷子になった記憶が蘇る。
迷子ってほんとうに怖くて、保護されても周りにいるのは知らない大人ばっかり。あの時はお兄ちゃんが見つけてくれたんだっけな。
「…A」
「ん？」
「……手、繋ぐ？」
遠慮がちにそう言う加藤くん。
少しだけ迷って、手を繋ぐの恥ずかしいな、緊張するなって気持ちよりここではぐれて加藤くんに迷惑かける方が嫌だな、と気づいたから「お願いします」と言って、加藤くんの手を取る。
「手繋いでるけど、はぐれないようにね」
「うん、気をつける」
そもそも人とそんなに手を繋ぐことがないから、ほんとうに緊張する。
手を繋いでても、なんとなく加藤くんの一歩後ろを歩いてしまう。
それに気づいたのか、少しだけ加藤くんの歩く速度が遅くなって自然と横並びになる。
そこからまた5分くらい歩いたところで、加藤くんが足を止める。
「ここ。俺が一番好きな所」
「うわぁ…、綺麗」
まだ見頃より少し早い、ってしきりに加藤くんは言ってたけど、それを感じさせないくらい鮮やかな景色が目の前に広がる。
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作者名：にゅすの さくら | 作成日時：2022年7月11日 12時
