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「待たせちゃってごめんね」
「ううん、大丈夫。まだ待ち合わせ時間より前だしね」
なんだかんだテストも終わってすぐにやってきた約束の日。
あの日決めた服装を昨日の夜改めてクローゼットから出して見てみたら、明らかにたのしみにしてたのを実感して少しだけ恥ずかしかった。
いつもは下げてる髪を今日はちょっと上げてみようかな、と思ってポニーテールにしてたら少し時間がかかって出ようと思ってた時間より遅くなっちゃった。
「…A、なんか雰囲気違うね」
「髪、上げてるからかな」
「それもありそうだけど、多分服」
「服？」
「うん。…なんか、意外だった」
「よく言われるよ笑」
初めて一緒に遊ぶ友達とかには大体『私服が意外だ』って言われる。
お兄ちゃんがいることを知ってる人だったらそうでもないんだけど、知らない人はほんとに驚いた表情をするから少しおもしろい。
「じゃあ行こっか、電車の時間もあるし」
「うん」
実は今日どこに行くかってこと、加藤くんからは伝えられてない。聞いたら「それはお楽しみに」って言われてた。
集合はいつも学校行く時の駅と同じだし、行先は分からないから大人しく加藤くんについていく。
いつも登校に使う電車とは反対方向の電車に乗る。
日曜日なのに電車にはあまり人がいなくて快適。登下校の電車もこれであってほしいもの。
席は普通に空いてるからそこに腰掛ける。当たり前のように隣に座る加藤くんを見て、あぁそっか、と思ったりする。
何気なくインスタを開くと、テスト明けだからかみんな遊びに出かけてる。わたしもなんだけど。
カラフルに彩られたストーリーを見て、仲いい子のにはいいねを押していたら、急に肩をトントンと叩かれる。
「どうしたの？」
「ここ、今日行くところ」
そうやってようやく教えてもらった行き先。
加藤くんはわたしの目の前に自分の携帯を差し出していてそこに書いてあったのは紅葉の名所で、思わず「えっ」と声が出る。
見頃よりは少し早いんだけど、と言って携帯を操作してほら、と写真を見せてくれる。
「去年行った時の写真なんだけど」
「うわぁ…。きれい」
「でしょ。写真整理してた時に出てきて、Aと行きたいなぁって思ってさ」
何気なく、当たり前のようにそう言われてどきっとする。
けど、そんな私の様子には気づかず、その場所の話を加藤くんは続ける
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作者名：にゅすの さくら | 作成日時：2022年7月11日 12時
