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「加藤くん」
「A。あれ、小山さんは?」
「先に愛菜の方行ってるって」
「あーそういうことね」
携帯とご飯だけ持ってきた加藤くん。
2人で並んで屋上に向かう。
加藤くんと並んで歩くことにも慣れてきたし、違和感というか、そんなものも感じなくなってきた。
「お、A〜!加藤〜!」
「2人とも早くない?」
「愛菜の教室の方が屋上に近いんだよね」
屋上には多分卒業した先輩たちが、私たちと同じように屋上でご飯を食べてたと思われる痕跡がいくつか残ってる。
机と椅子が4つくらい置いてあったり、机の中には鉛筆が入ってたり。
既に机と椅子には愛菜とけいちゃんが横並びで座っていたから、私と加藤くんも隣に座ることになった。
「あ、愛菜。クッキーいる?」
「え、いるいる!Aのお母さんが作るお菓子好きなんだよね〜」
「加藤くんとけいちゃんもどうぞ」
「ほんと?ありがと!」
たまにお母さんが趣味で作るお菓子を持ってくと喜んでくれる愛菜。
たまたま持ってきてたからあげたら嬉しそうな表情でクッキーを食べてる。
けいちゃんは小さい頃から何回も食べてるからいつものように袋から出して食べてるけど、初めての加藤くんはまず貰うかどうか迷ってるみたい。
「これ、ほんとにいいの?」
「うん。うちだけでは消費しきれないし笑」
クッキーを食べておいしいねって言ってくれて、愛菜から「またAが作ったやつも食べたい!」って言われる。
愛菜の隣でそれに賛同するけいちゃん。
少し不安そうな顔で私の方を見た加藤くん。
「…うん、わかった。また作ってくるね」
「じゃあその時は私もAにお菓子持ってくる〜」
「愛菜はお菓子作り出来ないでしょ笑」
「うるさいな〜。やろうと思えばできるよ」
「ほんと〜?」
今までとは変わりないはずのけいちゃんと愛菜の会話。それなのに聞いてれば聞いてるほど胸が苦しくなる。
ふと、背中に温かさを感じる。
え、と思って隣を見れば加藤くんが優しく背中をさすってくれてた。
まるで、『大丈夫、俺がいるから』って言ってくれてるみたいだった。
「…小山、長谷川。俺ら先戻ってるわ」
「え、かとうく…」
けいちゃんと愛菜の返事を待たずに加藤くんは私の手を取って歩き出す。
後ろから「ちょっ、しげ!?」「Aっ!?」っていうけいちゃんと愛菜の焦った声が聞こえるし、私も何が何だか分からなくて内心あわあわしてる。
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作者名:にゅすの さくら | 作成日時:2022年7月11日 12時