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『A？大丈夫だった？』
「加藤くん…笑」
家に帰って少し経ったタイミングでそれを見計らったかのように電話がかかってくる。
着信画面を見た時と、電話に出てすぐの加藤くんの言葉を聞いて思わず笑ってしまった。
「加藤くんって心配性なの？笑」
『そうかもしんない笑』
加藤くんの笑いを含んだ楽しそうな声が電話越しに聞こえてくる。
加藤くんが心配性だったのは少し意外。
『…A』
「ん？なに？」
『俺が言ったくせにあれなんだけど、小山のA出してもいい？』
「……うん、大丈夫」
わざわざそうやって聞いてくれるのも加藤くんらしいなぁって思う。
まぁ、私が知ってる加藤くんのことなんて大して多くないんだけどさ。笑
『Aといるとさ、小山がずっとAのこと気にかけてたの納得がいくっていうか。
なんか、気にかけてないとなって思うんだよね』
「そうなの、かなぁ」
『おもしろいからね、Aって』
『小山がずっとAのこと気にかけてた』
そんな話は初めて聞いたから、嬉しいなと思うと同時に、少しだけ切なくなった。
けいちゃんの気にかけるはあくまで"幼なじみ"として、"目の離せない妹的存在"だからってことを痛いほど自分で痛感している。
私が黙ったからか、加藤くんの少しだけ焦った声が聞こえてくる。
『あ、ごめん。どうでもいい話ばっかしちゃって』
「んーん。加藤くんの話、おもしろいから飽きない」
『そう？』
「うん」
加藤くんと話をしてると加藤くんって話がうまいよなぁとつくづく思う。
だからこそ、予期せず話し込んじゃって長くなることが多いんだろうなぁということも同時に思う。
そこから少し話してから電話を切る。
「Aー。慶一郎くん来てるよ」
「えっ！？けいちゃん！？」
なんでけいちゃんが来てるんだろうとか、連絡もなしに家に来たことなんてなかったから慌てて階段をかけ下りる。
途中で踏み外そうになって、コケるかと思って焦った。
「慶一郎くん、リビングにいるよ」
「わかった！」
「あと、私仕事行ってくる」
「はーい」
「もしあれだったら慶一郎くんにもご飯食べてってもらいなね」
「あー……。うん、聞いてみるね」
多分断られるだろうなぁとは思うけど、けいちゃんが大好きなお母さんにはなんだか言えなかった。
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作者名：にゅすの さくら | 作成日時：2022年7月11日 12時
