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「ありがとね、A」
「ううん。こっちこそありがとう」
さっき買った飲み物を飲みながら駅までまた2人で歩く。
あまりにも暑いから、時々私のハンディファンを貸したりしながらゆっくり歩く。
ハンディファンをもってる私を見て「ちゃんと女子なんだね笑」と笑われたことは恐らく色んな意味で一生忘れない。
……というか、加藤くんは私のことを笑いすぎだと思う。
なんでそんな笑われるんだろうかと不思議で仕方ない。
「…ここまでで大丈夫?」
「だって加藤くん、家の方向反対じゃん」
「そうだけどさ、何かあったら困るし、」
「じゃあ、何かあったらすぐ加藤くんに電話かける」
「うん、そうして」
加藤くんって優しいよなぁと思いながら駅の改札を抜ける。
駅を出て、少し歩いた先にある交差点。
ここで私と加藤くんは真逆の方向に向かう。
言わば分岐点みたいなところ。
「…ねぇ、」
「なに?」
「なんで、加藤くんってそんなに優しいの?」
私がそう言えば少し困った表情をする加藤くん。
加藤くんに聞いたって、明確な答えが返ってくる訳じゃないのに聞いてしまった。
少しだけ、申し訳ない気持ちになる。
「……ほっとけないから、かな」
「ほっとけない?」
「うん。なんか、Aはほっとけない。あと、一応だけど彼女だしね」
加藤くんのその言葉を聞いて、そういえば加藤くんの彼女(仮)なんだなぁってことを思い出す。
それを忘れるくらい、自然と加藤くんと話せていたんだと思って安心する。
「……その顔は彼女ってこと忘れてたでしょ笑」
「え」
「やっぱね笑 A、すぐ顔に出るから笑」
それについては多少の自覚はあるけど、そんなに加藤くんにバレていると、けいちゃんに私の想いがバレてないかまた心配になる。
でもけいちゃんは、変なところで鈍感だから気づいてなさそう。
「ほんっとに何かあったら電話してよ?」
「分かった笑 じゃあ、明日ね」
「うん」
そう言って横断歩道を渡った後に、加藤くんが軽く手を振るから、少し恥ずかしいなと思いつつ、私も手を振り返す。
そしたら、たまたまその様子を見ていた小さい女の子に「おねえちゃんは、あのおにいちゃんとなかよしなの?」と聞かれた。
なかよしって言うのは何か違うかもしれないけど、「うん、そうだよ」と返事をする。
その女の子は「いいなぁ〜」とだけ言って公園に向かっていった。
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作者名:にゅすの さくら | 作成日時:2022年7月11日 12時