10. ページ12
.
「…なんかさ、」
『うん』
「加藤くんの声って安心する」
そう思ったから伝えると少しの沈黙のあと『…ありがと』って言葉が聞こえてきた。
「あれ？加藤くん照れてる？笑」
『うるせぇ笑 A、いつの間に俺をイジれるようになってんだよ笑』
少し砕いた口調でそう話してくれるから少しは加藤くんと仲良くなれたのかな、って思う。
けいちゃんと2人で話してる時の加藤くんの表情が何故か記憶に残っていて、いつかその表情を、2人で話してる時に見れたらいいなぁなんて柄にもないことを考える。
「加藤くんはけいちゃんから聞いた？」
『あぁ。今日の帰りね。一応知らないていで話しておいたけど』
「何から何までありがとね」
『いいよ。俺がしたくてしてることだから』
その後、少し話した時に授業で分からなかったところの話をしたら、じゃあ教えてあげようか？と言われ、明日の帰りに教えてくれることになった。
いつもはけいちゃんに教えてもらってたことが多かったからなんだか新鮮。
これからはけいちゃんに教えてもらうことも減るのかなぁって考えるとさびしかったけど、加藤くんが教えてくれるんだって思うと少しだけ嬉しくなった。
『…じゃあ、おやすみ』
「うん、おやすみ」
通話を終えるといつの間にか30分近く経っていて、異性とこんなに長い時間通話をしたのは初めてだった。けいちゃんともしたことない。
電話を切った時にはすでにけいちゃんから借りてた本のことなんて忘れきってて、もうすることもないしと思ってすぐに寝た。
そうしたからか、次の日もいつもより早い時間に起きたから昨日と同じ、1本早い電車に乗ることにした。
朝起きてから、机の上に置いてあった本のことを思い出して、電車で読もうかなと思ってリュックにいれる。
「いってきまーす」
「A。慶一郎くんと一緒に行かなくていいの？」
2日連続も一緒に登校してない私とけいちゃんがよっぽど珍しいのかお母さんにそう聞かれる。
「…うん。けいちゃん、一緒に行く子いるんだって」
「ふーん…。A1人？」
「まぁ」
「愛菜ちゃんは違うんだっけ？」
「方向真反対だから」
「そっか」
お母さんはまだ何か言いたげだったけど、電車の時間もあるから靴を履いて家を出る。
もう9月なのに昨日みたいに太陽が鬱陶しいくらいに照りつけていてハンディファンを使ってても少し汗ばむくらいだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 174人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にゅすの さくら | 作成日時：2022年7月11日 12時
